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第5回 違憲審査基準の使い分け

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第5回 違憲審査基準の使い分け

1 必ず違憲審査基準を選択した「理由」を書く

 平成22年採点実感2頁には,次のような記述があります。
「幾つかの審査基準から,なぜ当該審査基準を選択するのか,その理由が説明されなければ」ならない。
 また,平成20年ヒアリング3頁には,司法試験は,「原則的な規範について,修正がきくかというのを問うている」という記述があります。
 ここから導かれるのは,まず,①原則的な規範を理由付きで理解し,次いで,②それを修正する理由を学ぶ必要があるということですね。大切なのは,相場観から外れるような審査基準,例えば,職業選択の自由や財産権,生存権につき,A厳格審査基準を適用するような答案を書かないことでしょう。また,必ず,原則的な規範を「理由」付きで説明すること,そこから修正するのであれば,その「理由」を説明することが肝要です。
何度もいうようでしつこいかもしれませんが,理由がなければ,答案としては知らない人と同じです。司法試験が書面審査であることを肝に銘じておいてください。

2 違憲審査基準の要素は保護の有無・程度×制限の有無・程度・態様×立法裁量の有無・程度

以上のように答案で論じるためには,違憲審査基準はどのような要素で決定されるのかを学ぶ必要があります。そこで,これらの要素を学んでいきましょう。

違憲審査基準を決める要素としては,主に次の3つの要素があげられます。

①憲法上の権利としての保護の有無・程度
②制限の有無・程度・態様
③立法裁量の有無・程度

 1つ1つ順番に検討しましょう。

(1) ①憲法上の権利としての有無・程度

まず,憲法上の権利として有無・程度を検討します。
ここでは,①-ⅰ憲法上の権利として保護されるか,①-ⅱ憲法上の権利としてどの程度保護されているか,の2つのステップを検討することになります。
①-ⅰ憲法上の権利として保護されるか否かは,明文の規定がある場合は,原則として問題になりませんね。
問題になるのは,明文の規定がない場合です。ここで,安易に13条後段の幸福追求権に飛びついてはいけません。「報道のための取材の自由」についても,憲法上は明文の規定はありませんよね。しかし,博多駅事件(最大判昭44・11・26刑集23-11-1490)【百選Ⅰ80】は,「憲法21条の精神に照らし,十分尊重に値いするもの」としています。このように,憲法上の明文の保障がなくとも,それに近い権利で保障されるかを検討する必要があるのです。憲法13条後段の幸福追求権は,最後の砦であるということを忘れないでください。
この点は意外と忘れがちですが,芦部憲法にもキチンとその旨の記載があります。「個別の人権を保障する条項との関係は,一般法と特別法との関係にあると解されるので,個別の人権が妥当しない場合にかぎって13条が適用される(補充的保障説)」(芦部119頁)。
なお,これ以上の議論については,第6回以降に「新しい人権」のところで検討する予定ですので,しばらくお待ちください。
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※5-1 某受験指導校は,2011年の全国模試において,思想を窺い知ることができる前科の照会がなされた事案において,単に前科であることに着目して,13条後段の幸福追求権に飛びついておりました。しかし,思想を窺い知ることができる時点で,19条の派性原理として導くべきでしょう。アルバイトのスタッフさんのレベルが知れますね。

①-ⅱ憲法上の権利としてどの程度保護されているかは,当該憲法上の権利が保障する行為の典型例と何が異なるかに着目して判断することになります。
例えば,上記の「報道のための取材の自由」は,博多駅事件によれば,憲法上の保障の程度は,「十分尊重に値するもの」というレベルにすぎませんね。同判決はその理由につき「報道機関の報道が正しい内容をもつため」という指摘しているように,取材の自由は表現行為そのものというより,表現内容の正確性を確保するための手段にすぎないとして位置付けているようです。
この点は,学説の有力な批判があるところですね。その理由は,「報道は,取材・編集・発表という一連の行為により成立するものであり,取材は,報道にとって不可欠の前提をなすこと」(芦部177~178頁)にあるのは,しっかりと押さえておいてくださいね。要するに,前提行為たる取材行為がなければ,表現活動もありえないわけですから,取材に自由についてもしっかりと満額の保障をしてください,ということです。

 以上の検討から,憲法上の権利として保障されなければ,基本的には,合理性の基準のような緩やかな基準が適用されることになるでしょう(え?保障されないのに憲法問題になるの?という方は,次回をお楽しみに!)。
また,保障されるとしても,「十分尊重に値する」レベルですと,厳格審査まで持ち込むことは難しいかもしれません。イメージとしては,一段階審査基準が下がるような感じですね。

(2) ②制限の有無・程度・態様

 次に,②憲法上の権利に対する制限の有無・程度・態様を検討します。
 まず,②-ⅰ制限の有無については,結局は,憲法上の権利の保障の有無と表裏一体の関係にあるため,厳密に分けて検討する必要はありません。詳しく知りたい方は,作法41~44頁・欄外番号226~231(特に,43~44頁・欄外番号230)を参照してください。

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 次に,②-ⅱ制限の程度を検討することになります。ここでは,「全面規制か一部規制か」という視点が重要です。例えば,薬事法事件判決(最大判昭和50・4・30民集29-4-572)【百選Ⅰ102】は,「一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限である」として,許可制=強力な制限という定式を確立しています。この判決は,許可制が営業の自由の制約にとどまらず,「職業の選択の自由そのものに制約を課する」という全面規制であるから,強力な制限であるとしているわけです。他方,いわゆる営業の自由の制限は,職業そのものに就くことは制限されていないわけですから,一部規制にとどまり,審査基準は下がることになるでしょう。そうすると,事案における争点は,事実上職業選択の自由を制限するか,職業遂行の自由に対する制限にすぎないのか,という点でしょう。実際に薬事法事件でも,このあたりが争点になっていますね(※5-2)。

※5-2 判決文のうち四(二)(1)「薬局の開設等の許可における適正配置規制は、設置場所の制限にとどまり、開業そのものが許されないこととなるものではない。しかしながら、薬局等を自己の職業として選択し、これを開業するにあたつては、経営上の採算のほか、諸般の生活上の条件を考慮し、自己の希望する開業場所を選択するのが通常であり、特定場所における開業の不能は開業そのものの断念にもつながりうるものであるから、前記のような開業場所の地域的制限は、実質的には職業選択の自由に対する大きな制約的効果を有するものである。」としている箇所です。国側から,特定場所における出店を制限するにすぎず,薬局という職業は選択できるため,職業選択の自由の問題ではなく,職業遂行の自由の問題にすぎない,という反論があったことがうかがえます。

 ②-ⅲ制限の態様についてですが,ア)直接・間接的・付随的規制,イ)事前・事後規制の分類が有益です。前者は,精神的自由で特に問題となります。

 ア)直接規制とは,「憲法上の権利の行使を規制することを目的とするもの」をいいます(読本81頁)。他方,間接的規制と付随的規制は,いっしょくたに「間接的・付随的規制」と理解する見解もありますが(読本81頁),ここでは次のように区別しておきます。すなわち,間接的規制とは,行動の結果としての弊害を直接的な規制対象とするものをいい,付随的規制とは,「意見とは異なる弊害の防止を狙った規制の結果,偶然的に意見表明の自由に制約が及んだこと」をいいます(宍戸39頁)。

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間接的規制と付随的規制の違いは,宍戸先生もおっしゃる通り,「かなり微妙です」。区別する方法としては,「表明される意見がもたらす弊害を防止するためにその意見の表明を制約するもの」(香城敏麿「政治的行為の規制に関する最高裁猿払事件」『憲法解釈の法理』(信山社,2004年)59頁)であるならば,直接規制です。そうではなく,「表明される意見の内容とは無関係に,これに伴う行動がもたらす弊害を防止することを目的とするもの」の場合,当該自由の制約が当然予定されているならば間接的規制となり,当該自由の制約など予定しておらずたまたま制約されたといえるならば付随的規制となります。ビラ貼を禁止する条例に対する法令違憲の主張は間接的規制,ビラのために住居へ立ち入った場合の住居侵入罪に対する法令違憲の主張は付随的規制ということになるでしょう。
 直接規制の場合は,審査基準は厳しめのものになるでしょう。他方,間接的規制の場合,「行動の結果としての弊害が直接的な規制対象だから,意見表明の自由の不利益の程度は小さいはず」(宍戸39頁)ですから,審査基準も1つくらい下がるでしょう。また,付随的規制の場合,偶然に規制されたにすぎないわけですから,不利益の程度はもっと小さいといえ,審査基準はさらに下がるでしょう。

なお,精神的自由の場合,これらの直接・間接的・付随的規制というベクトルの他に,内容着目・内容中立規制という別のベクトルを観念しております。詳しくは,表現の自由のところで扱いますが,簡単に違いを説明しておきましょう。内容着目規制とは,当該法律の適用対象が特定の表現・思想・学問等に限定されている規制を指します。内容中立規制とは,表現等の内容にかかわりなく,すべての表現活動等にあまねく適用される規制を指します。
以上の2つのベクトルをまとめると,下記の表のようになります(審査基準は,表現の自由のところで解説します。)(※5-3)。

第5回規制類型論

しっかりと理解するために,具体的に考えてみましょう。ここでのポイントは,法令違憲の主張と処分(適用)違憲の主張とでは,同一事例であっても,上記の規制類型の評価が異なる可能性があるということです。
【例1】ポルノ映画館を小学校の近くに建築することはできないという規制は,いうまでもなく内容着目規制ですね。その上で,当該規制がポルノ弾圧という目的なのか,善良な風俗を本当に保護する目的なのかで,直接規制か間接的規制が区別されると考えています。立法経緯を見て,どちらの目的であるかが争点になるでしょう。
【例2】立川反戦ビラ事件のように,反戦ビラを配布するために,敷地内に進入したところ,住居侵入罪で起訴されたという事例の場合,法令違憲の主張として,住居侵入罪そのものが憲法21条1項に違反すると主張した場合,同罪はすべての表現活動に適用されますから,内容中立規制ですね。また,同罪は,当然に表現行為に適用されることが包含されているとはいえない規制ですから,付随的規制といえます。もっとも,処分(適用)違憲の主張の場合,本当に内容中立規制,直接規制といえるかが争点になります。具体的には,ピザ屋のビラ,他の政治ビラについては起訴されていないならば,内容着目規制である疑いが生じますね。また,配布態様も,散らかすようにばらまくわけではなく,しっかりとポストに投函しているのであれば,住居の平穏が害されているとはいえませんから,住居の平穏を保護するための間接的規制である,とはいえず,直接規制と評価する方が素直です。

※5-3 以上のように,私は,直接規制,間接的規制,付随的規制の関係は,それぞれ独立の守備範囲を有していると考えております。すなわち,直接規制かつ付随的規制,というのはあり得ず,必ず3つのいずれか1つに分類できると考えております。この点の私の見解は,小山先生と考えの異なるところです。小山先生は,①行為内容自体の害悪に着目した規制,②生命,健康,財産保護など,表現内容・職業内容中立的な目的から行う規制,③ある特定の法益を保護するために,その法益を害するおよそあらゆる行為を禁止する規制が,表現行為や職業活動に対しても及ぶ場合の3つに分類し,①②が直接規制であり,③のみが直接規制かつ付随的規制であると考えております(作法36~37頁・欄外番号219)。その上で,間接的規制は,①~③とは異なる類型であり,「≪宗教法人に対する解散命令は,宗教的結社の自由を直接制限するものではなく,また信徒の自由を直接に制限するものではない≫という場合」に限られるとしています。私の見解ですと,小山先生の②は内容中立規制という別のベクトルの問題であり,①が間接的規制,③が付随的規制,直接規制は①~③の分類とは別モノとなります。このあたりは議論が錯綜しておりますので,どの見解でもいいでしょう。私の概念は1つの試案にすぎませんが,筋としては通っているはずです(論点教室94頁以下「13間接的制約・付随的制約」[曽我部真裕]がよく整理されていますが,私の見解とは異なります。)。
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 イ)最後に,事前・事後規制です。事前規制とは「憲法上保護された自由の行使に先立ち国家権力がそれを規制する場合」をいい,事後規制とは「自由の行使によって現実に弊害が発生した後に法的責任を追及する場合」をいいます(宍戸42~43頁)。
事前規制の方が,審査基準が高くなります。その理由は,第1に予測に基づいて制約する点,第2に「裁判所によって司法的に権利自由のコントロールがなされる」(法学教会編『註解日本国憲法上巻』(有斐閣,1953年)295頁)点にあります。特に,第2の点が重要です。要するに,事前規制であると,行政権がその要件該当性を判断することになる点で,司法権威よる手続の適正よりは劣ると判断せざるを得ません。ですから,事前規制であっても,司法権による判断がなされるならば,違憲の疑いはある程度緩和されるわけですね。

(3) ③立法裁量の有無・程度

③立法裁量の有無・程度については,司法府と立法府のどちらに委ねることが適切かを検討することになります。
第1回で指摘したとおり,違憲審査権は、我が国が採用している原則である「民主主義を覆すもの」です。ですから,民主主義で解決できること,民主主義の方が利害調整に適しているものは,立法府に委ねるべきです。具体的には,社会権との調整問題が生じる経済的自由権に対する制約や,そもそも憲法から原則形態を導くことができない抽象的権利(財産権の他,生存権などの請求権)等は,立法裁量による解決の方が適切でしょう。
他方,民主主義に委ねると救済されないものは,司法府たる裁判所が積極的に立法判断に介入する必要があります。この点につき,元最高裁裁判官である泉徳治先生も同様の指摘をしております。曰く,「①基本的人権のコアをなす精神的自由(思想・良心・信教・表現などの自由),②民主的政治過程(知る権利,集会・結社・言論・出版の自由,平等な選挙権),③社会的に分離し孤立した少数者の権利――の3つの分野では,これらを制約する立法などの合憲性審査には,司法が一歩前に出て,厳格な違憲審査基準か,少なくとも厳格な合理性の基準をもって臨むべきです。これらの権利の用語は,司法でなければできないことであり,司法の役割であります。」とあります(山田隆司著『最高裁の違憲判決―「伝家の宝刀」をなぜ抜かないのか』(光文社新書,2012年)292頁)。
これらの権利は,それぞれ①民主制に参加する自律した個人の基盤たる条件であること,②民主制に過程を構築するものであること,③民主制では救済が期待できないことから,立法裁量に委ねることは危険でしょう。
実は,皆さんがお馴染みの「二重の基準論」は,この立法裁量論に位置づけられることになります。二重の基準論とは,「精神的自由は立憲民主政の政治過程にとって不可欠の権利であるから,それは経済的自由に比べて優越的地位を占めるとし,したがって,人権を規制する法律の違憲審査にあたって,経済的自由の規制立法に関して適用される「合理性」の基準は,精神的自由の規制立法については妥当せず,より厳格な基準によって審査されなければならないとする理論」です(芦部103頁)。その根拠として,第1に精神的自由の優越的地位(実体的価値論),第2に裁判所の役割・能力論(民主的政治過程論・司法能力限界論)があげられます(論点教室17頁[松本哲治])。しかし,私は,第1の理由には賛同できません。なぜなら,いずれの憲法上の権利も自己実現の価値を有するからです。精神的自由権に特有の価値は,自己統治の価値にすぎず,当該価値は,第2の裁判所の役割論として説明することが可能です(読本76~77頁参照)。

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 立法裁量が認められるならば,自然と審査基準は下がり,厳格審査の可能性が排除されてしまいます。ただし,場合によっては,中間審査に持ち込むことは不可能ではありませんので,必ずしも緩やかな基準になるわけではありません。他方,立法裁量が認められず,むしろ裁判所が介入すべきであるならば,厳格審査の道が開かれます。もっとも,憲法上の権利における検討や規制類型論の検討で,審査基準が中間審査以下に落ちることは十分あり得ます。

3 小括
 
 以上,おおまかな使い分けのイメージを描いておきました。どの基準をいかなる場合に適用するべきか,という議論は,各論に譲ります。今回は,どのような点が争点になりそうか,という観点から,しっかり押さえておいてください。
ただし,あまりにもシステマチックに硬直的に捉えるのは,絶対にやめてください。あくまでも,しっかりと答案で論じるための思考ツールとして学習してください。こんなところに時間をかけるより,枠組み論をマスターして,個別的・具体的に論じる方がよっぽど大切ですから。

まとめ
・審査基準を決定する要因は,①憲法上の権利としての保護の有無・程度,②制限の有無・程度・態様,③立法裁量の有無・程度の3つである
・①保護の有無・程度の判断には,当該権利が保障する典型例との異同に着目する
・②-ⅱ制限の程度は,全部規制か一部規制かをしっかり論じる
・②-ⅲ制限の態様では,ア)直接・間接的・付随的の区別をしっかり論じる。特に,本当は直接規制ではないか,という疑いも忘れずに。
・②-ⅲ制限の態様では,イ)事前規制に該当するならば,司法権による行政権のチェックがあるかを検討する
・③立法裁量の有無・程度では,立法府に委ねるべきかという観点で論じる。特に,①精神的自由,②民主制的政治過程,③社会的に分離し孤立した少数者の権利は,立法府に委ねるべきではない。


次回予告
第6回は,「憲法上の権利の基本」です。お楽しみに。



司法試験の勉強道具 その1~椅子編~

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0 またもや寄り道

連載「憲法の流儀」も第5回まで終わり,何とか骨組が見えてくるような状態になってきました。
今後,もう少しだけ総論を書いた後,いよいよ各論へと突入していく予定です。

さて,今回は(も),連載と離れて,「勉強道具」をテーマにして書いていこうと思います。

今回ご紹介する勉強道具は,

椅子

です。

1 勉強は腰痛との戦いである

さて,司法試験に合格するためには,一般的にはそれなりの勉強時間を確保することになります。
そうすると,二宮金次郎なら格別,通常の人であれば,机に向かって椅子に座る時間が生活の大半を占めることになります。
これは実務家になっても似たようなものです。

しかし,1日中も椅子に座っていると,腰痛に悩まされるのです。
みなさんもご経験があるとは思いますが,これがまた大変苦痛であり,勉強効率を阻害するのです。


2 腰痛を改善するためには

インターネットで検索してみると,こんなサイトまで見つかる始末です。
 → デスクワーク派、必見! オフィスでできる腰痛体操

このような腰痛改善グッズもたくさん市販されています。


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3 根本解決は椅子を買うこと

しかし,腰痛体操をしたり,マッサージクッションを使用したところで,腰痛はまた発生してしまいます。
これらは対処療法でしかないため,腰痛が根本的に改善するわけではありません。

やはり,根本的に解決する方法は,【椅子を購入してしまうこと】です。

椅子には様々なものがありますが,やはりいいものを使うべきです。
ここでケチケチしていては,一生腰痛と戦うことになります。

長時間の勉強をする必要があること,実務家になっても継続して使う可能性があることから,多少の出費は惜しむべきではありません。
マッサージや整体,マッサージグッズにかける費用,腰痛改善の方法を検索する時間を考えれば,そこまで高い買い物ではありません。

高級チェアといえば,やはりハーマンミラーの【アーロンチェア】でしょう。
なんといっても,ニューヨーク現代美術館(MoMA)に永久収蔵されているだけに,その価値は折り紙付きです。

また,オカムラの【コンテッサ】も有名ですね。


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コンテッサ(Contessa) チェアー ポリッシュフレーム 座メッシュ 【ヘッドレスト】 ブ.../オカムラ (岡村製作所)
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しかし,椅子に10万円超は,いくらなんでも高額すぎます笑。
これは将来のあこがれとして,記憶の片隅かEvernoteにこっそりしまっておきましょう,

現実的な目線としては10万円以内に抑えたいところですね。
そこで,家具屋さんやインターネットでいろいろ探していると,【エルゴヒューマン】という椅子を発見しました。
【新型】エルゴプロ EHP-LPL ハイブリット機能 オットマン内蔵 BK(KM-11) EH.../Ergohuman (エルゴヒューマン)
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【新型】エルゴヒューマン EH-HAM ハイタイプ ハイブリット機能 BK(KM-11)/Ergohuman (エルゴヒューマン)
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エルゴヒューマンに座ってみたところ,アーロンチェアとも遜色ない座り心地でした。
特に,エルゴヒューマンは,ヘッドレストと腰のサポーターがとても快適です。

ただ,作りがしっかりしているのは,やはりアーロンチェアであることは否定できません。
アーロンチェアの12年保証は,耐久性に自信があってこそのものでしょうしね。
参考に,双方を所有している方の記事エルゴヒューマンを購入した方の記事紹介しておきます。

ともあれ,エルゴヒューマンは,価格と座り心地のバランスは最高です。
価格が変動しているようですが,6万円台で購入できる場合があることから,コストパフォーマンスがいいと言えるでしょう。


4 自習室用にバックジョイ

とはいっても,自宅では勉強しないし,自習室に椅子を持ち込めない,という方もいらっしゃるでしょう。

そんな方にオススメなのが,【バックジョイ】です。

バックジョイは,普段から使用している椅子に座る際に利用することで,背骨を正しいポジションにするという,腰痛を根本治療するための器具です。
全米で年間60万個の販売実績(2011)FDA アメリカ食品医薬品局に登録済みという,それなりにしっかりしている健康グッズです。

詳しくは,公式ウェブサイトをご覧ください。

実際に試してみたい!という方は,公式ウェブサイトの取扱い店一覧より,最寄りのお店を探してみてください。
私は,有楽町LOFTで出会い,即購入しました。
購入した日に,そのまま行きつけの映画館と近くのカフェ,帰りの地下鉄の車内で使用したのですが,腰への負担がかなり楽になります。
振り子構造になっているので,横にずれてもしっかりとホールドされ,満足度は高いですね。

バックジョイ リリーフクッション BackJoy Relief Cushion 腰の負担減少.../作者不明
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5 まとめ

いかがでしょうか?
健康グッズは意外とたくさんあるため,何を買うかは悩ましいところです。
この記事を参考に,みなさんの体にあうグッズを発見してみてください。

なお,Amazonは,送料無料かつ値段も割安ですので,購入するのはAmazonがオススメです。

次回以降,パソコン,万年筆をご紹介する予定です。
お楽しみに。


第6回 憲法上の権利の基本

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第2章 憲法上の権利

 第1章では,憲法訴訟という観点から,これまでの知識を再配置するという作業をしてきました。この連載の立場は,憲法訴訟を「統治機構の原則である民主主義に介入する例外的なもの」と位置づけ,違憲審査のルールや,違憲審査基準を決定づける要素につき説明しました。これで,憲法訴訟の概論的なものは,一通り学習したことになります。
 これからは,憲法訴訟において,それぞれの憲法上の権利や憲法上の原則が,それぞれどのように違憲審査のルールとして活用されるのかを学習していきます。学習の順番としては,最初に憲法上の権利とは何か,憲法上の権利とは全く性質の異なる平等原則を学習します。その上で,憲法上の権利の各論,統治機構の諸原則について学習する予定です。
 まだまだ先が思いやられるほどの量がありますが,一緒に頑張りましょう。

第6回 憲法上の権利の基本

1 憲法上の権利総論

(1) 主観的権利と客観法
 憲法は,国家の統治機構を定めるとともに,国家権力を拘束するものであることは,憲法の講義の初回で学習しますね。しかし,憲法の規定の中には,国家権力を拘束する道具として,大きく分けて「主観的権利」と「客観法」の2つがあります。
客観法(=客観原則)とは,「立法府を含むあらゆる国家機関を名宛人とする,拘束力ある法命題」をいいます。主観的権利(=憲法上の権利)とは,そのような客観法を前提に,「国家―国民間の具体的な生活関係を前提とする,主観憲法上の法関係」として観念されるものです(石川健治「『基本的人権』の主観性と客観性」『岩波講座憲法2』(岩波書店,2007年)3頁以下)。

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換言すれば,次の通りとなるでしょう。すなわち,主観的権利とは,国家に対して一定の行為の禁止を義務付けるのみならず,国民が国家に対してこれを義務付けさせることのできる国民固有の「権利」を指します。思想・良心の自由,表現の自由,職業選択の自由などは,まぎれもなく主観的権利といえるでしょう。他方,客観法とは,国家に対して一定の行為の禁止を義務付けるものだが,国民との関係では,「権利」とまでは言えず,反射的利益という程度にすぎないものを指します。政教分離原則,検閲の禁止などが,これに該当します(読本57~58頁,宍戸104~106頁参照)(※6-1)。

※6-1 両者の違いを,原告適格や主張適格の議論と結びつけて,「主観的権利の侵害があれば原告適格が認められるが,単なる客観法違反の場合,特別な訴訟類型が法律上定められていない限り,原告適格は認められない」とする見解もあります(読本57~58頁[巻美矢紀執筆部分])。しかし,付随的審査制の下では,憲法上の権利侵害があるとしても,実体法上の訴訟要件を満たさない限り,適法に提訴ができないはずです。したがって,この見解には賛成できません。
 なお,検閲の禁止等,一部の客観法につき,「特定行為排除権」として,主観的権利のように扱う見解(急所19~20頁参照)もありますが,あえて権利という実益があるかは疑問です。

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(2) 自由権と請求権
 主観的権利の分類としては,宮沢俊義先生に倣い,自由権,参政権,国務請求権の3つに分類するのが一般的です。しかし,ここではさらに単純化し,自由権と請求権の2つに分類することにします。この分類は極めて大切ですので,しっかりと覚えておいてください。
 自由権(=防御権・消極的権利)とは,「ある行為をしないことを要求する権利(不作為請求権)」を,請求権(=積極的権利)とは,「ある国家行為をなすことを要求する権利(作為請求権)」をいいます(急所4頁)。民法で例えると,自由権は,妨害排除請求権に類似し,「何もしないでくれ!」と要求するものです。他方,請求権は,給付請求権に類似し,「何かしてくれ!」と要求するものです。
この分類は,主観的権利につき,国家にどのような行為を求めるか,という観点から分類するものです。これによると,参政権は自由権としての側面と請求権としての側面を有することになります。すなわち,参政権の行使するためのインフラはあるが,その利用を妨げられるならば自由権,そもそも参政権を行使するためのインフラがないならば請求権としてとらえることになります。予備校論証でいうところの,「自由権的側面」と「請求権的(社会権的)側面」に対応するイメージですね。

(3) 請求権の特徴
 請求権の特徴は,主に次の2点です。1つは,憲法上の権利としての保護範囲が憲法上導けないこと,もう1つは,憲法訴訟において救済する方法が難しいことです。
まず,第1の特徴についてみていきましょう。自由権の場合,国家が行為をした時点で,憲法上の権利の制約を認定しやすいのですが,請求権の場合,「どのような請求をすることができるか」が,憲法の条文から導くことが困難です。そのため,請求権は,「それを具体化する法律によってはじめて具体的な権利となる,と考えざるをえない」(芦部260頁)という抽象的権利であるといえます。
この問題は,生存権では「二重の未確定性」といわれているものです。すなわち,「第1に,作為請求権の履行に当たっては,通常,複数の手段が存在し,手段の選択は,国の裁量にゆだねられる(手段・仕組みの未確定性)」と,「第2に,防御権は,制限が必要最小限度であることを求めるが,通常,積極的権利は,可能な限り最大限の作為を国家に求めるものではない(内容・程度の未確定性)」という性質があります(作法115頁・欄外番号504~506)。要するに,原則として,二重の未確定性の部分について,法律で具体的に内容を定めなければ,憲法上の権利としての保護範囲を導くことができないわけです。
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次に,第2の特徴についてみていきます。自由権の侵害が違憲であるとすれば,国家は単に当該行為をやめればいいだけですから,国家行為を無効化することで,自由権の保障は実現されます。他方,請求権の場合はそうはいきません。仮に請求権を侵害し違憲であるとしても,当該権利を充足するために,国家は「作為」をしなければなりません。しかし,法の支配が妥当する我が国において,授益的行為であるとしても,法律なくして国家行為することは,非現実てきであり,望ましくもありません。そのため,通常は違憲状態の確認しかできず,既存の法制度を活用することで国家の作為が可能であるような例外的な場合に限り,権利が実現されるにすぎません。例えば,生活保護法の受給額を下げるような政令の改正が違憲となった場合は,当該改正を無効として,従前の政令の効力を復活させ,生活保護法に基づき支給しているがゆえに救済することができるにすぎません。
このような特徴を前提とすると,当該事例で問題となっている権利が自由権か請求権かを特定することは,極めて重要なことであることがわかるはずです。


2 新しい人権

 以上の権利の分類を前提に,いわゆる「新しい人権」に関する論点を再構築していきましょう。

(1) 自由権か請求権かを見極める
 まず,新しい人権として保障されるか否かを論じるにあたり,当該事例で国民が求めているのは,国家に対する不作為か,国家に対する作為かを峻別することが大切になります。上記の通り,自由権であれば,保護範囲論証につき,憲法上の保障があるかを論じれば足りるのに対し,請求権であれば,これに加えて実体法を解釈することで,何が憲法上の保障であるかを論証する必要があります。作法にも,「「新しい人権」については,防御権的側面(消極的側面)と積極的側面の複合的性格があると説かれている」との指摘があります(作法114頁・欄外番号503)。
これは,通常の憲法上の権利を検討するにおいても,非常に重要なことになります。実際に,司法試験委員会は,「知る権利」と「知る自由」をキチンと区別して使っております。このことは,平成23年出題趣旨1頁の記載から推測できます。平成23年司法試験の事案は,Googleストリートビュー類似のサービスにつき許可制とし,プライバシーが問題になるような画像を掲載したX社の行為が,法令上の禁止行為に該当するとして,許可の取消処分がなされた,という事案でした(詳細はこちら)。この事案は,単純にX社の表現の自由の問題として論じれば足りるところ,ユーザーの「知る権利」の問題として論じた答案が一定数あったようです。これに対し,出題趣旨では次のように批判をしました。
「本問において,X社はユーザーの「知る権利」侵害を理由として違憲主張できるとする
のは,不適切であり,不十分でもある。まず,ここで「知る権利」と記すことが,「知る権利」に関する理解が不十分なものであることを示している。X社の提供する情報は,政治に有効に参加するために必要な情報ではないし,政府情報等の公開が問題となっているわけでもない。さらに,ユーザーは不特定多数の第三者であるので,特定の第三者に関する判例を根拠にX社がユーザーの「知る自由」を理由に違憲主張できるとするのは,不適切であり,不十分である。そもそも「知る自由」は,他者の私生活をのぞき見する自由を意味しない。
 要するに,「知る権利」の問題にはなり得ない,「知る自由」ならば問題の余地はあるが,他者の私生活をのぞき見する自由を認めるのは難しい,ということです。
 その上で,上記の記述を読み解くと,司法試験委員会は,「知る権利」について,マスメディア等に対して政治に有効に参加するために必要な情報を請求する権利,国家に対して政府情報等の公開を請求する権利,と考えていることがわかります。他方,「知る自由」は,情報を受領する自由としてとらえているようです。このように,司法試験委員会は,「知る権利」は請求権,「知る自由」は自由権というように,用語を使い分けているわけです。

(2) 憲法問題にするために一般的自由説を採用は間違い
 憲法上の権利としての有無・程度において気を付ける点の2つ目は,憲法上の権利として保障されなかったとしても,憲法問題にすることは可能である,ということです。
 某受験指導校では,喫煙の自由が制限された事案において,人格的利益説を採用した上で,「喫煙はストレス社会において人格的生存に必要不可欠だから,憲法上保障される」と論じるか,「憲法問題にするために,一般的行為自由説を採用する」というような指導がなされているようです。というか,私はそのように指導されました。
 しかし,これは間違いです。憲法上の権利として保障されなくとも,自由権であれば,比例原則という客観法違反を問うことができます(読本85頁参照)。実は,芦部憲法には,次のような記載があります。
「人格的利益説をとっても,これらの行為(筆者注:バイクに乗るとか髪型を長髪にする)を行う自由が保護されなくなるわけではない。それを一部の人について制限ないし剥奪するには,もとより十分に実質的な合理的理由がなければならない。平等原則や比例原則(権利・自由の規制は社会公共の障害を除去するために必要最小限度にとどまらなければならないとする原則)とのかかわりで,憲法上問題となることもありうる。」(芦部120頁・太字は筆者による。)
 この記述は,上記のような予備校指導が間違いであることを痛快に指摘していますね。憲法問題にするために無理やり人格的利益を認めたり,一般的行為自由説を採用するという指導をする人間は,芦部憲法すらキチンと読んでいないということがわかりますね。

(3) 人格的利益説と一般的行為自由説
 さて,そうすると,新しい人権の論点について,どの見解を採用するべきでしょうか。この点についは,宍戸先生のご説明(宍戸14~24頁)が非常にわかりやすいので,これに依拠して説明していきます。
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 一般的行為自由説には,2つの種類があります。1つめは,戸波先生の見解であり,すべての人の一般的な行為を自己決定権として保障するものです(戸波177~178頁参照)。2つめは,少し古いのですが,公共の福祉に反しない限り一般的に自由を拘束されないという権利です。
 しかし,戸波説によると,「その自己決定の内容を際限なく広げていくのであれば,権利にふさわしい重みをもった自己決定と自由一般との区別がなくなること」,「それは同時に,権利と放任行為の違いを消滅させることにもなり,権利にほぼ相当する「法律上保護された利益」と「反射的利益」の区別のような,私たちの法体系で使われる一般的な用法にも反する」ことから,あまり適切な見解ではありません。また,後者の見解も,一般的行為のすべてが憲法上の主観的権利と同列に論じられるとするとの理解は,憲法上の権利の成立過程に反するため,適切であるとはいえません。すなわち,表現の自由,思想・良心の自由などの憲法上の権利は,人格的価値と深い関連性があるがゆえに保障されたものですから,一般的行為につき,人格的価値とは無関係に保障するとするのは,違和感があります。
 したがって,新しい人権として,主観的権利として保障されか否かは,「特定の行為が個人の人格的生存に不可欠であることのほか,その行為を社会が伝統的に個人の自律的決定に委ねられたものと考えているか,その行為は多数の国民が行おうと思えば行うことができるか,行っても他人の基本権を侵害するおそれがないかなど,種々の要素を考慮して慎重に決定しなければならない」(芦部120~121頁)として,人格的利益説を採用するべきでしょう。

(4) 憲法上の権利として保障されなかった場合の処理方法
 問題となるのは,人格的利益説により,憲法上の権利として保障されなかった場合の処理です。この場合,客観法としての比例原則に違反しないかを検討することになります。論証としては,「憲法13条後段が「客観法」として,およそ国民の自由の制限が法治国家原理に服すべきことを定めている」(宍戸23頁)というものが参考になります。これによると,第1に,法律の根拠があるか,第2に,立法府を拘束する比例原則に反しないかを検討することになります。
ここで,比例原則とは,①必要性の原則と②過剰規制の禁止から構成されるのですが(宍戸18頁),正直なところ,目的手段審査をすれば足ります。ただし,その審査基準は,残念ながら,中間審査基準以下,相場観としては合理性基準にならざるを得ません。もちろん,合理性基準であっても,違憲にできないわけではありませんので,しっかりとあてはめを論じてくださいね安念潤司「演習憲法」法学教室306号108~109頁があてはめの勉強には最適です。)。
以上の議論を前提とすると,喫煙の自由の制約の可否が問題となったのであれば,当該権利が憲法上の権利であることをゴチャゴチャ論じる暇があったら,さらっと権利性の問題は客観法によると論証し,問題となっている規制立法の問題点をしっかり論じる方が評価されるように思います。


まとめ
・憲法上の規定には,客観法と主観的権利の2つがある。客観法とは,国家に対して一定の行為の禁止を義務付けるものだが,国民との関係では,「権利」とまでは言えず,反射的利益という程度にすぎないものをいう。主観的権利とは,国家に対して一定の行為の禁止を義務付けるのみならず,国民が国家に対してこれを義務付けさせることのできる国民固有の「権利」をいう。
・主観的権利は,自由権と請求権に分類することができる。自由権とは,「ある行為をしないことを要求する権利(不作為請求権)」をいう。請求権とは,「ある国家行為をなすことを要求する権利(作為請求権)」をいう。
・請求権には,①憲法上の権利としての保護範囲が憲法上導けないこと,②憲法訴訟において救済する方法が難しいこと,という2つの特徴がある。
・新しい人権については,主観的権利として保障される範囲として人格的利益説を採用した上で,その保護範囲から外れる自由については,客観法としての比例原則を適用すれば足りる。その際,審査基準が中間審査基準以下になるのはやむを得ない。合理性基準であっても,あてはめで十分勝負できる。


● 次回予告
 第7回は,「憲法上の権利の享有主体性」です。お楽しみに。

【特別企画】個別的・具体的なあてはめとは何か~平成23年新司法試験を題材に~

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 そろそろ司法試験のシーズンですね。そこで,司法試験の憲法の論じ方について,最近指導していた気になったポイントをまとめて指摘したいと思います。
 

1 「当てはめ」は有害?

 どうやら,試験委員は,「当てはめ」なんてもんは有害だ!とおっしゃっているようです。その根拠は,平成23年採点実感の次のような記述です。
「観念的・抽象的・パターン的「当てはめ」という解答姿勢を取る受験者の心理は,一種守りの姿勢で,受験生心理としては分からなくはないものの,「事例に迫る」意気込みを感じないものであって,司法試験で事例を基に憲法問題を問うという出題の根本理念を失わせるものであり,極めて不適切であり,「有害」である。」
求められているのは,「事案の内容に即した個別的・具体的検討」である。あしき答案の象徴となってしまっている「当てはめ」という言葉を使うこと自体をやめて,平素から,事案の特性に配慮して権利自由の制約の程度や根拠を綿密に検討することを心掛けてほしい。」

このように,「当てはめ」については,コテンパンに攻撃されている状態ですね。
 とはいっても,どのようにすれば,司法試験委員会が求めているような「事案の内容に即した個別的・具体的検討」ができるのでしょうか?
 この点については,私もよく閲覧をする掲示板の「憲法の勉強法」なるスレッドにおいても度々話題になりますが,明確な答えを示すものはあまりおりません。また,私の知る限り,予備校答案の多くは,目的手段審査における目的審査にて,当該法律の目的規定(多くの場合1条)を対象に審査をするのみであり,また,あてはめについても理由もなく「相当だ,過大だ」と言い合っており,およそ議論ではなく原理主義者のぶつかり合いのようにすら感じます。
 そこで,どのようにすれば,「事案の内容に即した個別的・具体的検討」ができるのか,私なりの考えを述べていきます。

2 論じるターゲットを絞る

 まず,他の科目でもいわれていることですが,総花的に論じるべきではありません。具体的には,違憲審査基準論のところで扱った,目的審査,手段適合性審査,手段必要性審査,手段相当性審査の4つを丁寧に論じる必要はないということです。これらの要素のうち,必要な部分のみをしっかり論じることが大切です。
 
 そのためには,「論じるターゲットを絞る」ことが肝要です。すなわち,当該法律の全体をまんべんなくマシンガンで乱射するように攻撃するのではなく,当該法律のうち,当事者を救済するために必要な限度にターゲットを絞って数発狙撃する方が,よほど攻撃力が高いわけです。
 どのようにターゲットを絞るかというと,「条項単位で問題点を抽出すること」が大切になります。そのためには,本件で問題となっている処分が,どのような法律のどの条文の要件に該当するとしてなされているかを探求する必要があります。ここでは,行政法における個別法の解釈をするスキルが必要になります。

 例えば,平成23年新司法試験を例に説明してみましょう(問題文はこちら)。
本件においてX社は,A大臣のX社に対する特定地図検索システムの提供の中止命令(以下「本件処分」という。)につき,取消訴訟を提起すると考えられます。そこで,本件処分がどの条文のどの要件に該当するとしてなされたかを検討しましょう。
まず,中止命令の根拠条文を探すと,【参考資料】特定地図検索システムによる情報の提供に伴う国民の被害の防止及び回復に関する法律(以下「本法」という。)の8条3項であることがわかります。
次に,8条3項の要件をみると,①「前項の規定による勧告を受けた者が」,②「正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において」,③「第1項の申立てに係る被害及びこれと同種の被害を回復するため特に必要があると認めるとき」ですね。
続いて,8条3項の要件①の「前項」にあたる8条2項をみてみましょう。8条2項は,A大臣の勧告につき定めているところ,その要件は,①「前項の規定による諮問に対する答申があった場合において」,②「第1項の申立てに係る被害及びこれと同種の被害を回復するため必要があると認めるとき」ですね。3項と比較すると,「特に必要がある」ではなく,「必要がある」とされていますね。
さらに,8条2項の要件①の「前項」にあたる8条1項をみてみましょう。8条1項は,A大臣の勧告の前提にあたる被害回復委員会への諮問について規定しています。その要件は,①「特定地図検索システムによる情報の提供により被害を受けた者から申立てがあったとき」であり,消極要件として,②「措置を講じる必要が明らかにないと認める場合を除き」が定められています。

さて,この問題は少し荒いので,8条1項の要件①のうち,「被害」についての定義規定がありません。そこで,本法の他の規定を探してみると,どうやら7条各号が「遵守すべき事項」として,システム提供者に対する遵守事項を定めています。これを善意解釈すると,7条各号の義務違反により,自らの権利が害された事態について,「被害」と表現しているように読めますね。
そうすると,本件でX社は,7条何号のうち,どの要件に該当するのでしょう。ここで問題文を読んでみましょう。

「X社も,人の顔や表札など特定個人を識別することのできる情報と車のナンバープレートについてはマスキングを施し車載カメラの高さも法が定める高さに改めた。しかし,X社は,家の中の様子など生活ぶりがうかがえるような画像については,法で具体的に明記されていないとして,修正しなかった。」

 さて,ここから,X社は,7条1号「提供すべき画像の撮影に当たっては,これに用いるカメラを地上から1メートル60センチメートルの高さを超える位置に設置してはならないこと。」には違反していないことは明らかですね。
 また,同2号は,「個人識別情報」(本法2条4号。以下「4号情報」という。),「個人自動車登録番号等」(同5号。以下「5号情報」という。)及び「個人権利利益侵害情報」(同6号。以下「6号情報」という。)について,事前にマスキング等の措置をとることを義務付けています。X社は,4号情報,5号情報については,しっかりとマスキングをしていますから,問題ありませんね
 ところが,「家の中の様子など生活ぶりがうかがえるような画像」については,修正をしておりません。そうすると,A大臣は,「家の中の様子など生活ぶりがうかがえるような画像」が6号情報に該当するとした上で,本法7条2号に違反すると考えていることがわかりますね。
 なお,本法7条3号は,「インターネットにより提供した画像」に関する規定であることから,「提供すべき画像」に関する規定である2号と異なります。具体的には,インターネットに提供する前に,マスキングの要否を検討しなさいというのが2号であり,インターネットに提供した後に,マスキングが必要であると判断したら修正しなさいというのが3号です。本件において,X社は,事前にマスキングをしていない点で7条2号,それが発覚したにもかかわらずマスキングをしていない点で7条3号違反ということになるでしょう。

 以上より,A大臣は,X社が提供した「家の中の様子など生活ぶりがうかがえるような画像」は,2条6号の「個人権利利益侵害情報」に該当することから,これにつき修正を施さないことが,本法7条2号及び同3号に該当するため,これらの画像を公表された者からの申立てがあったとして,8条1項の諮問,同2項の勧告,同3項の中止命令をなした,ということがわかりました。

 このように考えると,X社が攻撃すべきターゲットは,本法8条各項,7条2号,同3号のうち,6号情報を掲載することを禁止している部分になるでしょう。こうすることで,被告の反論のところで,「個人情報を保護することは重要であるから,本法は合憲である」という不適切な空中戦をすることが防止できます。このような反論は,X社が,4号情報を攻撃している(=個人情報垂れ流しもOK)という主張をしている場合には有効ですが,X社は4号情報が禁止されていることは理解していますから,この部分で攻防戦を繰り広げても,あまり意味はないということになります。

3 憲法上の権利として保障されるか

 さて,これでターゲットを絞ることができました。
 これにより,本件でX社が制約されていると考える法的利益は,「6号情報に該当するとされる画像をインターネット上で提供する自由」ですね。そこで,このような法的利益が,憲法上の権利として保障されるかが問題となります。
 まず,表現の自由(憲法21条1項)に飛びつきたいところですが,何かが違うような気がします。そこで,典型的な表現の自由と何が違うかを考えてみましょう憲法の流儀第5回2(1)参照)。
 
 まず,表現とは,「心理的状態・過程または性格・志向・意味など総じて精神的・主体的なものを,外面的・感性的形象として表すこと。また,この客観的・感性的形象そのもの,すなわち表情・身振り・動作・言語・手跡・作品など」を意味するとされます(広辞苑より)。要するに,何らかの思想や信条を伝達する行為が表現なわけです。
ところが,本件においてX社が提供しているのは,「事実」にすぎません。この点が,典型的な表現の自由と異なるところです。具体的には,自己統治の価値が希薄であることになります。
 この点については,博多駅事件で事実の報道の自由が問題となったことを想起できれば,勝負ありですね。原告としては,博多駅事件の判例の射程を拡張して,本件の自由も,表現の自由として満額の保障を受けると主張することになるでしょう。その理由としては,事実の報道は,表現行為の前提となる事実を提供するものであることから,判例は表現の自由として保障したものであると「読む」のです。そうすると,6号情報についても,報道の自由と同様に,表現行為へとつながる可能性のある事実であるとして,表現の自由に含まれると論ずるわけです。反対に,被告としては,博多駅事件の判例の射程を縮小し,本件自由は,表現の自由として保障されないと反論することになるでしょう。その理由としては,判例が報道の自由を表現の自由として保障した趣旨は,民主主義の過程としてマスメディアの占める重要な地位にあると「読む」のです。そうすると,6号情報のような,単なる事実の垂れ流しは,マスメディアの報道と同視することはできず,判例の射程は及ばないといえるわけです。

 次に,表現の自由が想定しているのは,古典的には送り手と受け手が同じ場所に存在する対話のようなものであると考えられます。また,近代のマスメディアの発達により「送り手と受け手が分離された」という論証からもうかがえるとおり,新聞やテレビなども含まれていると考えられるでしょう。その上で,本件は,インターネットという手段であることから,送り手と受け手の立場に互換性がある点では,古典的な表現の自由に似ています。他方,インターネットは,場所的・時間的に密接でなくとも,相互にコミュニケーションが取れる点で,古典的なものとは異なる新しい価値があります。
 この点の価値をいかに解するか,現代におけるインターネットと表現の関係をどのように考えるかを論じることになるでしょう。原告としては,インターネットによる情報発信は,意見交換が容易にできること,マスメディアと異なり様々なトピックの情報があふれていることから,マスメディアの情報発信と同程度の重要性があることを主張するでしょう。他方,被告としては,インターネットは,星の数ほどのウェブページが存在し,こちらから積極的にアクセスしなければ情報にたどりつけない点で,話題が絞られ,訴求力のある既存のマスメディアとは異なると反論するでしょう。

4 制約の程度・態様

 さて,憲法上の権利として保障される又は重分尊重に値するとした場合,違憲審査基準を決定する道具として,①内容着目規制・内容中立規制,②直接規制・間接的規制・付随的規制というものがありますね(憲法の流儀第5回2(2)参照)。
 本件は,6号情報に該当する情報が規制の対象であり,すべての表現が等しく制約に服するものではないため,①については,内容着目規制といえそうです。もっとも,②については,当該表現の内容が政府に都合が悪いから規制する,という「直接規制」ではなさそうですね。おそらく,インターネットで提供されることで生じる弊害を防止するための規制であることから,「間接的規制」になりそうです。

 しかし,ここで,「本件規制は間接的規制であるから」と簡単に認定してはいけません。大切なのは理由です。なぜ,間接的規制といえるのでしょう。大きく分けて,そもそも公道から見える範囲の画像であっても,インターネットで提供されると二次的利用等の弊害が生じるというのが立法過程でありましたね。また,真に直接規制をするのであれば,国家権力としては,簡単に権限を発動できるようにするはずです。ところが,本件法律は,命令を出すためには,前提として被害を受けた者からの申立て(本法8条1項)及び第三者機関たる被害回復委員会の諮問(同2項)が必要であることから,恣意的な権力乱用を防止する制度があります。このように,直接規制がなされないような制度的担保があることから,本法は「間接的規制」であるといえるわけです。
 このように,制約態様の認定についても,個別的・具体的に論じることが求められるわけです。なお,本件では,立法裁量が認められるか否かは,問題にするべきポイントではなさそうですので省略します。

5 目的手段審査

 このような個別的・具体的な権利の保障及び制限の程度・態様の検討をすることで,違憲審査基準が設定されます。正直なところ,生存権に厳格審査基準,表現の自由の内容着目規制・直接規制に合理性基準など,相場観から大きくはずれなければ,どの違憲審査基準を採用したかは,大した問題ではないでしょう。
 それよりも,目的手段審査の具体的なあてはめの方がよっぽど大切です。平成23年採点実感(補足)にも,「きちんとした検討の上で審査基準を立てたとしても,結論を導き出すためには,事例に即した具体的な検討が必要である。」との記載があることからも明らかでしょう。
 
(1) 目的審査
 早速,目的審査をしてみましょう。
 本法1条によると,本法の目的は,「国民生活の安全と平穏の確保に資すること」にあるとされています。また,ひらたく考えれば,プライバシー保護ということもできそうですね。これらの利益は必要不可欠であるといえる,といいたいところですが,ちょっと待ってほしいところです。

 そもそも,目的審査とは,当該法律そのものの目的を審査するものでしょうか? これについては,「え?違うの?」という反応がありそうなところですが,残念ながら違います
目的審査で審査すべきなのは,ターゲットにしている規制の目的,具体的には,当該条項の立法趣旨です。本件では,本法の目的そのものを争うのではなく,6号情報をインターネットにおいて提供する自由を制限した目的を争うべきなのです。本法の目的規定(1条)は,当該条項の立法趣旨を推察するために役には立ちますが,それ自体を審査の対象とするべき性質のものではありません。

では,当該条項の目的を考察するにあたり,目的規定の他に何を参照すればよいのでしょう。その答えは,問題文の中にあります。問題文を読むと,架空法令の場合,当該法令がなぜ制定されたのかの背景事情が,立法事実として記載されています。
平成23年新司法試験については以下の通りです。
「庭,ベランダ,室内等に置いてある物から,そこに住む人の家族構成や生活ぶりが推測され得る。」
「さらに,このような情報は,犯罪を企む者に悪用されるおそれもあり得る。」
「Z機能画像には,公道上であっても,その場所にいることやそこでの行動を知られたくない人にとっては,公開されたくない画像が大量に含まれている。」
「また,ドメスティック・バイオレンスからの保護施設など,公開されては困る施設も映されている。」
「加えて,路上や公園で遊ぶ子供が映されていることで,誘拐等の誘因になるのではないかと案ずる親もいる。」
「さらに,インターネット上に公開されたZ機能画像の第三者による二次的利用が,頻繁に見られるようになっている。」

 これらの事実より,6号情報の掲載禁止の趣旨となりそうなものをピックアップするのです。例えば,「公開されたくない画像」というのは,4号情報や5号情報以外のものであること,7条4号の周辺周知義務を実施していることから公開を回避することは可能なはずであることから,必要不可欠とはいえなさそうです。また,「第三者による二次的利用が,頻繁に見られるようになっている」ことは,二次的利用そのものの法益侵害性に疑問がありますから,やはり,必要不可欠とはいえないでしょう。
他方,「犯罪を企む者に悪用されるおそれ」や「公開されては困る施設も映されている」こと,「誘拐等の誘因になる」ことは,生命身体の保護として考えれば,なるほど必要不可欠なものとはいえそうです。
このように,目的審査においては,考えられる複数の目的につき,それぞれ個別的・具体的に論じるべきであると考えています。

(2) 手段適合性審査
 次に,手段適合性審査では,当該手段が目的を促進するか(=因果関係の有無),当該手段は目的との関係で実効性はあるか(=因果関係の程度)を審査することになります(憲法の流儀第4回2(2)参照)。その際は,当該規制により目的が促進されるかについて,それを支える事実があるかを中心に検討してみましょう。

 さて,6号情報の提供を禁止することで,本当に生命身体の保護がなされるのでしょうか。少なくとも,立法に至る経緯で,Z機能画像が原因で発生した犯罪や子どもの誘拐,公開されては困る施設への被害は,具体的に発生していませんね。また,「公開されては困る施設」を保護するために,6号情報全体の規制が許されるとするのも,論理の飛躍がありますね。「公開されては困る施設」のみを公開禁止にすれば足りる話ですね(これは手段必要性審査ですが,答案で明確に分けて論じる必要はありません。)。
 そうすると,6号情報の提供を禁止すれば,生命身体の保護という立法目的が達成されるという適合性の関係は,観念上の想定に過ぎず,事実に基礎づけられたものであるとはいえなさそうです。

(3) 手段必要性審査
 手段必要性審査とは,当該手段を採用する必要性,換言すれば,より制限的でない他の選びうる手段があるか否か(=LRAの有無)を審査するものです(憲法の流儀第4回2(3)参照)。特に,法令の中に重い処分と軽い処分がある場合,そのような重い処分がなくとも,軽い処分のみで目的は達成できるのではないか等は,考察してみると面白いでしょう。

 平成23年新司法試験ですと,8条3項をみると,不利益処分として,ⅰ「その勧告に係る措置の実施」(=措置命令)とⅱ「インターネットによる特定地図検索システムの提供の中止」(=中止命令)の2種類の命令が定められています。しかしながら,真に目的を達成するためには,被害があった場合に当該画像に修正をかけるⅰ措置命令を法定すれば足り,ⅱ中止命令を定める必要はない,と主張できそうですね。
 もっとも,被告からは,被害申立てがある前に6号情報の公開を防止するためには,ⅱ中止命令を法定する必要があるとの反論が想定されます。特に,プライバシー権は一度侵害されると回復が困難であること,一度インターネット上で画像が提供されると容易に複製され,瞬く間に全世界に流通するため,削除が事実上不可能であることから,未然防止は必要といえそうです。また,少なくとも複数の4号~6号情報を掲載している業者は,他にも違反画像を掲載している蓋然性が高いことから,中止命令によることも合理的であると考えることもできます。

(4) 手段相当性審査
 手段相当性審査では,当該規制により得られる利益と失われる利益を比較衡量します。その際には,問題文中にある立法趣旨や当事者の主張等のヒントを参考に,これらを具体化して考えてみましょう。

 平成23年新司法試験では,失われる利益については,X社の主張が参考になります。
「まず,その情報は,ユーザー自身がそこを実際に歩いている感覚で画像を見ることができるので,ユーザーの利便性の向上に役立つ。」
「また,それは,不動産広告が誇大広告であるか否かを画像を見て確かめることによって詐欺被害を未然に防止できるなど,社会的意義を有する。」

 ここで「ユーザーの利便性」とは何を意味しているかを考えてみましょう。Z機能画像を利用すると,実際に現地に行かなくてもあたかも現地にいるような情報を得ることができますね。そうすると,現地に行くための時間的・金銭的コストが大きく節約できる,といえそうです。これは日本のZ機能画像のユーザー数に照らすと明らかに大きい利益といえそうです。
しかし,6号情報に生活ぶりがうかがえる画像が含まれるとすると,住宅街の画像のほとんどが掲載されなくなるか,少なくともマスキング処理されてしまうことから,利便性が大きく失われてしまいます。

他方,得られる利益は,4号・5号情報にも該当しない要保護性の低い画像であること,高さ1メートル60センチの高さの公道から見える範囲であること,7条4号の事前周知措置を実施したにもかかわらず回避行動をしなかった者の画像であることから,失われる利益よりは小さいということができます。

これに対し,被告からは,得られる利益については,公道から見える範囲であるとしても,インターネット上で公開されることによる被害救済という点を指摘することが想定されます。具体的には,インターネット上で提供された画像は,公道とは異なり,他人の目を気にすることなくじっくり観察することができますね。また,公道ではカメラで風景を撮影することは心理的に負担がありますが,インターネット上の画像でしたら,複製も容易です。さらに,実際に,インターネット上での二次的利用が見られるように,その流通速度は,無視できないものがあります。このように,公道から見える範囲であるとしても,インターネット上で流通させないことで保護される利益は,大きいという主張が考えられますね。

このバランシングは難しいところですが,少なくとも,生活ぶりがうかがえる画像までをも含む6号情報について禁止できるとすれば,やはりZ機能画像の実益が失われてしまうように思います。他方,4号・5号情報により保護されない画像についても,同様に要保護性を有する画像もあり得そうです。具体的には,4号情報は「特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ,それによる特定の個人を識別することができることとなるものを含む)」とるため,「容易」ではないものの,SNS等のウェブ上で公開されている情報を名寄せすることで特定可能なものについては,4号情報により保護されません。また,容易に照合できなくとも,例えば年賀状で相手方の住所を知っている場合,居住地や服装から一定の範囲では特定されてしまうような場合も,4号情報では保護されません。そうすると,他人には見られたくないであろう私生活上の行状(例えば,キスをしているところなど)が掲載されている場合,少なくとも一部の人には,誰の行為か特定されてしまうわけです。したがって,個人の特定に基礎を置く4号・5号情報のみでは,保護する範囲は足りないように思います。
そこで,6号情報の定義である「個人の権利利益を害するおそれ」について,「4号・5号と同程度の法的保護に値する利益が,公開により直ちに損なわれる場合」と限定解釈をすることで,バランスをとることが考えられます。この限定解釈によれば,インターネットの特殊性を考慮した上で,得られる利益とのバランスがとれると考えます。


6 まとめ
 
 以上が,「事案の内容に即した個別的・具体的検討」についての,私なりの回答です。司法試験直前期であることから,少し駆け足に説明してしまいましたので,後日書き直す可能性があります。

・論じるターゲットを絞る
・権利保護については,典型例と何が異なるかを具遺体的に論じる
・制約態様についても,問題文や法令の仕組み解釈をすることで具体的に論じる。
・審査基準は相場観から外れなければ何でもより
・目的審査では,法律そのものの目的ではなく,立法事実に照らし,当該条項の立法趣旨を審査する
・手段審査においては,問題文中にある抽象的な言葉につき,想像力を膨らませて具体化する


 この記事が,みなさまの受験の力になれれば幸いです。
 それでは,本試験頑張ってきてくださいね。
 健闘を祈っております。

【ご紹介】大島義則先生著「憲法ガール」(法律文化社,2013年)がAmazonにて予約開始

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0 司法試験直前期ではありますが

いよいよ司法試験まであとわずか,というところまで来てしまいましたね。
かつて,私の答案添削をしてくださった実務家の先生に,
「司法試験なんて,身体検査みたいなもんだ」
と言われたことは,今でも覚えておりますし,まさにその通りであると思います。

今までしっかりと勉強してきた方なら,自信をもって本番に臨んでくださいね。


1 憲法ガールの出版

さて,今回ご紹介するのは,「憲法ガール」という書籍です。
2013年5月9日より,Amazonで予約が開始されたようです。

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著者は,大島義則先生という憲法好きの弁護士です。
大島先生は,慶應義塾高校,大学,法科大学院の先輩であり,駒村圭吾先生(慶應義塾大学教授)のゼミ出身ですから,仲良くないわけがありません。
一時期,同じ職場に在籍しており,毎日のようにランチで憲法談義をしておりました。
また,これまでに2回ほど,伊藤建・大島義則先生コラボ講義をしたこともあります。

このように,大島先生は,私にとって,「憲法お兄さん」(お兄ちゃん?)的ポジションであります。

そんな大島先生渾身の作品「憲法ガール」が,この度出版されることになりました。
内容面については,私も相当参考にしており,自信をもって推薦できる1冊です。

(これで私が答案を披露する必要性がなくなりましたね。)


2 憲法ガールとは

さて,ブログの読者の中には,「憲法ガールって何?」という疑問をお持ちの方がいるかもしれません。
憲法ガールとは,tower-of-babel氏が,ブログ「インテグリティな日々。」において連載していた作品です。

内容面の特徴としては,以下の2点があげられます。
①(新)司法試験の解説であること
②ライトノベルであること


書籍は,ブログに加えて,以下の5点が追加・変更されております。
③全年度について答案
④キャラクターのイラスト
⑤レミ先生のワンポイントレッスンという役立つコラム
⑥必要な限度での判例集
⑦リサーチの基づく本文の全面改訂


特に,答案がついているのは,本当に重宝しますね
この答案は,私も読ませていただきましたが,これまでの出版されている司法試験の解説(※1)の中でも一番実践的であると感じます。

※1
平成24年司法試験については,下記の本もご参照ください。
宍戸常寿先生(東京大学准教授)の素晴らしい解説がございます。


司法試験論文解説&合格エッセンス〈平成24年〉 (本試験合格レベル解明Book)/辰已法律研究所
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3 インターネット上でも大反響


憲法ガール出版の知らせに,Twitterでは多くの反応が寄せられました。
大島義則『憲法ガール』出版に対する法クラの反応

この「お祭り」状態の結果,Amazonの「本のヒット商品」第1位に輝きました!



インターネットの力を実感する日でしたね。

また,とある大学教員の方のブログでも,以下のように速攻レビューがなされています。
あの #憲法ガール がついに書籍化!ブログからまた新しい本が生まれました


4 注目すべきポイント

このように,憲法ガールに対する期待は,極めて高いものであることがわかりますね。

さらに注目すべきは,帯です。
なんと,宍戸常寿先生(東京大学准教授)と伊藤真先生(弁護士・伊藤塾塾長)の2大巨塔が帯を書かれております!


宍戸常寿先生といえば,私が憲法を勉強するために愛用していた書籍の著者であり,司法試験受験界に対して大きな影響を与えた先生です。

憲法 解釈論の応用と展開 (法セミ LAW CLASS シリーズ )/日本評論社
¥2,835
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伊藤真先生は,私が憲法を学ぶきっかけを作ってくださったお方であり,伊藤塾ゼミ「憲法 論文の流儀」を後押ししてくださるなど,何度も何度もお世話になりました(※2)。

※2
実は,大島義則先生は,かつて伊藤塾においてゼミを開催しておられたこともあります。
その内容は,なんと「憲法上の権利の作法」の出版よりも早く,三段階審査を取り扱っておられるという先鋭的な講座であったようです。

憲法 第3版 (伊藤真試験対策講座 5)/弘文堂
¥4,410
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このような重鎮の推薦文があることも,憲法ガールの革命的な内容を推認するための間接事実といえそうです。

また,本書の校正には,松尾剛行先生(弁護士)という,現在ハーバード大学LSに留学中の,これまた天才的なお方が携わっております。

私も校正を少しばかりお手伝いいたしましたが,大して仕事はできませんでした。


5 是非ともご予約を

「憲法ガール」というブログ発の連載がインターネット上で好評となり,出版してリアルワールドに出現するという現象は,法学教育の現代的展開であるといえるでしょう。

また,理論的ではあるものの受験対策には距離がある法科大学院と,その逆である予備校との間を埋めるための書籍であるといえ,司法制度改革のもたらした良い側面であるともいえそうです。

(新)司法試験について非常に楽しく読める書籍ですので,ご予約を強くオススメいたします。

憲法ガール/法律文化社

¥2,520
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なお,問題文,出題趣旨,採点実感等の他,上位答案まで収録している点で,辰已の「司法試験論文全過去問集」シリーズは,非常に使い勝手がよいように思います。
憲法ガールとあわせて読むと,効果的であると思います。
司法試験論文全過去問集〈1〉公法系憲法/辰已法律研究所
¥2,310
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私も負けていられませんね。
頑張って連載を書きあげたいと思いますので,お楽しみに!

【速報】平成25年司法試験 論文式試験問題 公法系第1問 ※解説ではありません!

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1 前半戦お疲れ様でした

 受験生のみなさま,まずは前半戦2日間お疲れ様でした。

 「失敗してしまった。」
 「もう合格は難しいかもしれない。」


 そう思っている方が多いと思います。

 しかし,私も試験当日はそのように感じていましたし,多くの合格者もまた同様の気持ちになっているように思います。
 ですから,そんなことは気にしないでください。

 よく講義で話すのですが,私は2日目の民事系でやらかしてしまいました。
 具体的には,民法の転用物訴権の問題において,転用物訴権がどの要件の論点であったかがわからなくなりパニックになりました。
 そのため,損失と利得について,よくわからないまま逆のあてはめをしてしまったのです。
 この失敗を引きずり,続く商法では条文を読み間違えて財源規制(メイン論点)を落とし,民訴でもよくわからない答案を書いてきてしまいました。
 
 そんなこんなでトイレで項垂れていたところ,見ず知らずの人物から,このように声をかけられました。

「この試験は,諦めたらいけません。まだまだ挽回できますから,頑張りましょう。」

 私は,この言葉に本当に本当に助けられました。
 しかも,本当に初対面で,全く存じ上げないお方でしたので,その優しさに心打たれました。

 そこで,気を取り直して,3日目の試験がない日は,刑事系の総仕上げと択一対策を必死にやりました。
 終わったことはどうにもなりません。
 失敗自体が相当気になってしまい,ちょっとだけ調べてみたりしました。
 でも,失敗しても何とかなります。
 失敗したのがわかったのであれば,他の科目でそれをカバーすればいいのです。

 失敗をカバーをするための方法は,人それぞれであると思います。
 知識を確認すること,ゆっくり休むこと等,ご自身にあった方法を実践してください。

 後半戦も頑張ってください!
 

2 速報:平成25年司法試験論文式試験問題(公法系第1問)を公開

 さて,ここで特別企画です。
 どの予備校よりも,法務省よりも早く,司法試験の問題を公開します!

 Twitterや2ちゃんねるにおいて,問題文を募集したところ,何名かの方々から情報提供がありました。
 広報してくださった方,提供してくださった方,本当にありがとうございます。

 受験生の精神的な負担を考慮して,司法試験の最終日が終わるまで,一切の解説はいたしません。
 


 問題文のpdfファイルはこちらです(※1)。

※1:実際の問題文と1行あたりの文字数が異なるところ,誤植がある可能性もありますので,ご了承ください。

[公法系科目]

〔第1問〕(配点:100)

 Aは,B県が設置・運営するB県立大学法学部の学生で,C教授が担当する憲法ゼミナール(以下「Cゼミ」という。)を履修している。Cゼミの202*年度のテーマは,「人間の尊厳と格差問題」である。Cゼミ生は,C教授の承諾も得て,ゼミの研究活動の一環として貧富の格差の拡大に関して多くの県民と議論することを目的としてシンポジウム「格差問題を考える」を県民会館で開催した。そのシンポジウムでの活発な意見交換を経て,「格差の是正」を訴える一連のデモ行進を行うことになった。そのデモ行進については,Cゼミ生を中心として実行委員会が組織され,Aがその委員長に選ばれた。実行委員会は,第1回目のデモ行進を202*年8月25日(日)に行うこととして,ツイッター等を通じて参加を呼び掛けたところ,参加希望者は約1000人となった。そこで,Aは,主催者として,B県集団運動に関する条例第2条(【参考資料1】参照)の定めにより,B県の県庁所在地であるB市の金融街から市役所,県庁に至る片道約2キロメートルの幹線道路を約1000人の参加者が往復するデモ行進許可申請書を提出した。デモ行進が行われる幹線道路沿いには多くの飲食店があり,市の中心部にある県庁や市役所の周りは県内最大の商業ゾーンでもある。B県公安員会は,デモ行進は片道2車線の車道の歩道寄りの1車線内のみを使うことという条件付きで許可した。
 第1回目のデモ行進の当日,Aら実行委員会は,デモ参加者に対し,デモ行進中は拡声器等を使用しないこと,また,ビラの類は配らず,ゴミを捨てないようにすることを徹底させた。第1回目のデモ行進は,若干の飲食店から売上げが減少したとの県への苦情があったが,その他は特に問題を起こすことなく終えた。そこで,Aら実行委員会は,第2回目のデモ行進を同年9月21日(土)に,第1回目と同じ計画で行うこととし,同月5日(木)にデモ行進の許可申請を行った。これに対し,B県公安委員会は,第1回目と同じ条件を付けて許可した。
 B県では,次年度以降の財政の在り方をめぐり,社会福祉関係費の削減を中心として,知事と県議会が激しく対立していた。知事は,同月13日(金)に,B県住民投票に関する条例(【参考資料2】参照)第4条第3項に基づき,「社会福祉関係費の削減の是非」を付議事項として住民投票を発議し,翌10月13日(日)に住民投票を実施することとした。
 第2回目のデモ行進も,拡声器等を使用せず,ビラの類も配らずに無事終了した。ただし,住民投票実施ということもあって参加者は2000人近くに達し,「県の社会福祉関係費の削減に反対」という横断幕やプラカードを掲げる参加者もいたし,「社会福祉関係費の削減に反対票を投じよう」というシュプレヒコールもあった。また,デモ行進が行われた道路で交通渋滞が発生したために,幹線道路に近接した閑静な住宅街の道路を迂回路として使う車が増えた。第2回目のデモ行進終了後,市民や町内会からは,住宅街で交通事故が起きることへの不安や騒音被害を訴える苦情が県に寄せられた。また,第1回目よりも更に多くの飲食店から,デモ行進の影響で飲食店の売上げが減少したという苦情が県に寄せられた。
 Aら実行委員会は,第3回目のデモ行進を同年9月29日(日)に行うことにして,参加予定人員を2000人とし,その他は第1回目・第2回目と同様の計画で許可申請を行った。しかし。B県公安員会は,住民投票日が近づいてきて一層住民の関心が高まっており,第3回目のデモ行進は,市民の平穏な生活環境を害したり,商業活動に支障を来したりするなど,住民投票運動に伴う弊害を生ずる蓋然性が高いと判断し,当該デモ行進の実施がB県集団運動に関する条例第3条第1項第4号に該当するとして,当該申請を不許可とした。
 この不許可処分に抗議するために,Aら実行委員ばかりでなく,デモ行動に参加していた人たち約200人が,B県庁前に集まった。そこに地元のテレビ局が取材に来ていて,Aがレポーターの質問に答えて,「第1回のデモ行進と第2回のデモ行進が許可されたのに,第3回のデモ行進が不許可とされたのは納得がいかない。平和的なデモ行進であるのにもかかわらず,デモ行進を不許可としたことは,県の重要な政策問題に関する意見の表明を封じ込めようとするものであり,憲法上問題がある」と発言する映像が,ニュースの中で放映された。そのニュースを,B県立大学学長や副学長も観ていた。
 AたちCゼミ生は,当初から,学外での活動の締めくくりとして,学内で「格差問題と憲法」をテーマにした講演会の開催を計画していた。デモ行進が不許可になったので学内講演会の計画を具体化することとなったが,知事の施策方針に賛成する県議会議員と反対する県議会議員を講演者として招き,さらに,今回のデモ行進の不許可処分に関するC教授による講演を加えて,開催することにした。C教授の了承も得て,Aたちは,Cゼミとして教室使用願を大学に提出した。同じ頃,Cゼミ主催の講演会とは開催日が異なるが,経済学部のゼミからも,2名の評論家を招いて行う「グローバリゼーションと格差問題:経済学の観点から」をテーマとして講演会のための教室使用願が提出されていた。
 B県立大学教室使用規則では,「政治的目的での使用は認めず,教育・研究目的での使用に限り,これを許可する」と定められている。この規則の下で,同大学は,ゼミ活動目的での申請であり,かつ,当該ゼミの担当教授が承認していれば教室の使用を許可する,という運用を行っている。同大学は,経済学部のゼミからの申請は許可したが,Cゼミからの申請は許可しなかった。大学側は,Aらが中心となって行ったデモ行進が県条例に違反すること,ニュースで流されたAの発言は県政批判に当たるものであること,また講演者が政治家であることから,Cゼミ主催の講演会は政治的色彩が強いと判断した。
 Aは,B県を相手取ってこの2つの不許可処分が憲法違反であるとして,国家賠償訴訟を提訴することにした。

〔設問1〕
   あなたがAの訴訟代理人となった場合,2つの不許可処分に関してどのような憲法上の主張を行うか。
   なお,道路交通法に関する問題並びにB県条例における条文の漠然性及び過度の広汎性の問題は論じなくてよい。

 〔設問2〕
   B県側の反論についてポイントのみを簡潔に述べた上で,あなた自身の見解を述べなさい。

【参考資料1】B県集団運動に関する条例(抜粋)
 第1条 道路,公園,広場その他屋外の公共の場所において集団による行進若しくは示威運動又は集会(以下「集団運動」という。)を行おうとするときは,その主催者は予めB県公安委員会の許可を受けなければならない。
 第2条 前条の規定による許可の申請は,主催者である個人又は団体の代表者(以下「主催者」という。)から,集団運動を行う日時の72時間前までに次の事項を記載した許可申請書三通を開催地を管轄する警察署を経由して提出しなければならない。
  一 主催者の住所,氏名
  二 集団運動の日時
  三 集団運動の進路,場所及びその略図
  四 参加予定団体名及びその代表者の住所,氏名
  五 参加予定人員
  六 集団運動の目的及び名称
 第3条 B県公安委員会は,前条の規定による申請があつたときは,当該申請に係る集団運動が次の各号のいずれかに該当する場合のほかは,これを許可しなければならない。
  一~三 (略)
  四 B県住民投票に関する条例第14条第1項第2号及び第3号に掲げる行為がなされることとなることが明らかであるとき。
 2 B県公安委員会は,次の各号に関し必要な条件を付けることができる。
  一,二 (略)
  三 交通秩序維持に関する事項
  四 集団運動の秩序保持に関する事項
  五 夜間の静ひつ保持に関する事項
  六 公共の秩序又は公衆の衛生を保持するためやむを得ない場合の進路,場所又は日時の変更に関する事項

【参考資料2】B県住民投票に関する条例(抜粋)
第1条 この条例は,県政に係る重要事項について,住民に直接意思を確認するための住民投票に係る基本的事項を定めることにより,住民の県政への参加を推進し,もって県民自治の確立に資することを目的とする。
第2条 住民投票に付することができる県政に係る重要事項(以下「重要事項」という。)は,現在又は将来の住民の福祉に重大な影響を与え,又は与える可能性のある事項であって,住民の間又は住民,議会若しくは知事の間に重大な意見の相違が認められる状況その他の事情に照らし,住民に直接その賛成又は反対を確認する必要があるものとする。
第4条 (略)
2 (略)
3 知事は,自ら住民投票を発議し,これを実施することができる。
4 住民投票の期日は,知事が定める。
第14条 何人も,住民投票の付議事項に対し賛成又は反対の投票をし,又はしないよう勧誘する行為(以下「住民投票運動」という。)をするに当たっては,次に掲げる行為をしてはならない。
 一 買収,脅迫その他不正の手段により住民の自由な意思を拘束し又は鑑賞する行為
 二 平穏な生活環境を害する行為
 三 商業活動に支障を来す行為
2 (略)



なんと「ツイッター」が登場していますね。
しかも脚注なしという。
問題を解くにあたって不可欠な事情でないことはわかりますが,平成20年新司法試験では,ウェブページやサイトに脚注があったことに照らすと,若干不親切ではありますね。

昨日,ツイッターの法学系の方々では祭りのような状態でした。
もしかしたら,司法試験委員の先生方は,ツイッターを監視しているのでしょうか。

なお,ご存知の方も多いとは思いますが,私はツイッターをしておりますので,そちらの方もご参照ください。
よろしくお願いします。

【解説】平成25年司法試験(憲法)

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1 司法試験お疲れ様でした!
 受験生の皆さん,平成25年司法試験,本当にお疲れ様でした!手応えがなかった方が大半であるとは思いますが,まずは短答式の合格発表までゆっくり休んでくださいね。
 司法試験後は様々な過ごし方がありますが,まずはとにかく遊んでください。自由に時間が使えることは,人生の中でそう多くはありません。一緒に勉強をしてきた仲間,これまで疎遠だった方々に会うなど,有効に時間を使うことをオススメします。
 ちなみに,「司法試験後に勉強はした方がよいでしょうか?」という質問ですが,私は合格発表後でよいと思います。

2 平成25年司法試験公法系第1問は超良問
 さて,試験のことは思い出したくもないという方もいらっしゃるかとは思いますが,気になってしまうのが人間の性。後進の受験生のためにも,平成25年司法試験の簡単な解説をしておきたいと思います。この解説は,あくまでも私個人の感想であり,当然のことながら司法試験委員の予定しているものとは異なります。しっかりとした解説は,出題の趣旨や採点実感等を踏まえてからとなりますので,その点はご了承ください。

(1) ウェブ上の解説など
現時点では,伊藤塾辰已が速報を出していますね。
 しかし,いずれも深い検討をしているとは思えず,表面的なものにとどまりますので,なんとも言えませんね。

 充実した解説として,憲法ガールの著者のブログがありますので,そちらもあわせてご一読ください。
憲法ガールアンソロジーその1 「夢の続き ~平成25年新司法試験~」

※概ね同内容ですが,この記事とは以下の点がことなります。
 ・憲法ガールでは伝統的パブリックフォーラムに内包する危険とされているところ,この記事では集団暴徒化論として論じている点
 ・この記事ではルール理論を論じている点
 ・憲法ガールでは学生を大学の自治の主体として構成しているところ,この記事では大学の自治とは離れた通常の学問の自由の問題として扱っている点
 ・憲法ガールでは処分②について大学の裁量統制に流しているところ,この記事ではC教授の学問の自由を優先するとしている点

憲法ガール/法律文化社

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(2) 再現答案
 憲法の再現答案は,現時点では以下のものがアップされております。
 ・帆船ペスカトーラ(Pescatora)様
 ・平成25年司法試験、うけてきました様

(3) 総評
 平成25年司法試験公法系第1問は,B県立大学の憲法ゼミの学生Aが「格差の是正」を訴えるデモ行進を企画したところ,第2回目までは許可されたものの,第3回目は不許可となってしまったことから,B県立大学で「格差問題と憲法」をテーマにした講演会の開催を計画するも,「政治的目的での使用」に該当するとして,教室使用申請を不許可とした,という事案でした(問題文はこちら)。
 まず,形式面については,設問2の問い方が変更されました。すなわち,平成22年から平成24年までの設問2は「設問1における憲法上の主張に関するあなた自身の見解を,被告側の反論を想定しつつ,述べなさい。」でしたが,平成25年からは「B県側の反論についてポイントのみを簡潔に述べた上で,あなた自身の見解を述べなさい。」となりました。変更後の表記は,これまでの採点実感の記載を問題文に取り入れたものですから,実質的に回答内容を変更する必要があるわけではないでしょう。
 次に,実質面についてですが,「表現活動と公の秩序」という超典型的な議論につき,ストレートに問う超良問であるといえそうです。これまでの(新)司法試験の中でも,特に実力の差がはっきりとでる最高峰のものといえそうです。具体的には,いわゆる予備校論証や予備校答案ばかり検討している方には厳しい問題であるのですが,しっかりと最高裁判例をあてはめまで読み込んでいる方にとっては,何を論じて欲しいかが明確な問題であったといえそうです。
 問題意識としては,近年は反原発を含むデモ活動が活発であるところ,このような表現活動の規制につき,どのように「公の秩序」と調整するのかというところでしょうね。

3 3つの争点
 本問では,大きく3つの点が争点となります。
 第1は,【参考資料1】B県集団運動に関する条例(以下「条例①」という。)3条1項4号が,【参考資料2】B県住民投票に関する条例(以下「条例②」という。)14条1項2号,3号に掲げる行為をデモ行進にかかる申請の不許可事由としている点です。設問1の問題文には,「なお,道路交通法に関する問題並びにB県条例における条文の漠然性及び過度の広汎性の問題は論じなくてよい。」とのなお書があるところ,道路交通法に関する問題である法律と条例の関係(憲法94条),漠然不明確性ゆえに無効の法理,過度の広汎性ゆえに無効の法理は,問題にすべきではないことが明らかです。しかし,ここにいう「過度の広汎性ゆえに無効の法理」とは,いわゆる主張適格と結びついた文面審査の議論(広島市暴走族追放条例事件参照)であり,LRA審査(=必要性審査)を排除する趣旨ではないと読むべきでしょう。そうすると,表現の自由が重要な価値を有することを前提に,条例②14条1項2号「平穏な生活環境を害する行為」や同3号「商業活動に支障を来す行為」のような利益を不許可事由とすることの是非を端的に問うことは禁止されていないはずです。
 第2は,B県公安委員会が,条例①に基づき,Aの第3回目のデモ行進に関する許可申請に対し不許可処分(以下「処分①」という。)をした点です。当該処分①は,Aの集団運動をする自由を侵害するものとして,憲法21条1項に反する,との主張があり得ます。
 第3は,B県立大学が同大学教室使用規則に基づき,Aの「格差問題と憲法」をテーマにした講演会のための教室使用申請に対し不許可処分(以下「処分②」という。)をした点です。当該処分②は,Aの集会の自由及び学問の自由を侵害するものとして,憲法21条1項及び憲法23条に反する,との主張があり得ます。
 なお,その他の問題点として,次のものが考えられますが,本問で論じる必要はないと思います。第1は,条例①が許可制を定めている点が事前抑制として憲法21条1項に反するとの主張ですが,新潟市公安条例事件(最大判昭29・11・24刑集8-11-1866)や東京都公安条例事件(最大判昭35・7・20刑集14-9-1243)【百選Ⅰ89】において合憲との結論は概ね一致しております。たしかに,双方とも,藤田八郎裁判官反対意見があるところですが,反対意見の主眼は,許可制そのものというより,許可要件が公安委員会の恣意的濫用を防止できるほど厳格でないことや,申請後に許可がないまま集団行動当日になってしまった場合の救済措置がない点を非難しています。また,LECの工藤北斗先生も指摘しているところですが,そもそもAは第1回目及び第2回目のデモ行進につき律儀に許可申請をしています


したがって,無許可で集会をしたような新潟県公安条例事件とは異なり,Aには許可制そのものに対する不満があるとは思えません。第2は,B県立大学教室使用規則が「政治的目的での利用は認めず,教育・研究目的での使用に限り,これを許可する」と定めている点が,学生の集会の自由を侵害するものとして憲法21条1項に反する,との主張もあり得ます。しかし,大学は政治的目的での活動をするような伝統的パブリックフォーラムではありませんね。また,学生Aは憲法ゼミの一環として教室使用申請をしたにすぎず,「政治的目的」で本件集会を行いたいと主張したいようには思えません。このあたりの取捨選択は,「『憲法訴訟』感覚」(平成23年出題趣旨)が必要なところかもしれませんね。

4 争点①(条例①3条1項4号の合憲性)
(1) 被制約利益の特定
 条例①3条1項4号が,条例②14条1項2号及び3号を不許可事由としていることから,B県公安委員会が「平穏な生活環境を害する行為」や「商業活動に支障を来す行為」に該当すると判断すると,屋外の公共の場所において集団運動をすることができません。したがって,条例①は,屋外の公共の場所において集団運動をする自由を制約しているといえます。
(2) 憲法上の保護の有無
東京都公安条例事件によると,集団運動の自由は,表現の自由として憲法21条1項により保障されます。厳密には,「その他一切の自由」に該当すると考えることになるでしょう。

東京都公安条例事件(最大判昭35・7・20刑集14-9-1243)【百選Ⅰ89】
およそ集団行動は,学生,生徒等の遠足,修学旅行等および,冠婚葬祭等の行事をのぞいては,通常一般大衆に訴えんとする,政治,経済,労働,世界観等に関する何等かの思想,主張,感情等の表現を内包するものである。この点において集団行動には,表現の自由として憲法によつて保障さるべき要素が存在することはもちろんである。」


なお,動く集会として「集会の自由」で保障されると解する余地もありますね(宮沢俊義『憲法Ⅱ』〔新版〕378頁参照)。
(3) 規制態様
 次に,規制態様を検討しましょう。
原告としては,内容着目規制であると主張したいところですが,条例①の適用対象は「屋外の公共の場所において集団による行進若しくは示威運動又は集会」であり,残念ながら,あらゆる表現行為が規制対象であると言わざるを得ません。活動家の鑑のような弁護士ならば,多くのデモ活動は反政府的言論をするものであるから,実質的には内容着目規制である,と主張するべきなのかもしれませんが,説得力を欠く印象があります。
また,「平穏な生活環境を害する行為」や「商業活動に支障を来す行為」という要件が漠然としており,恣意的濫用の危険性がある,と主張したいところですが,これは設問1では論じなくてよいとされている「条文の漠然性」の問題ですね。
(4) 違憲審査基準
 そうすると,原告は,内容中立規制のうち,時・場所・方法の規制に該当するとして,LRAの基準を主張するのが穏当ということになりましょうか。ただし,私個人としては,表現の自由の内容中立規制であっても,B県公安委員会の恣意的な濫用を防止するべく,明白かつ現在の危険の法理を主張することもあり得るとは思います。実際に,新潟県公安条例事件においても,「これらの行動について公共の安全に対し明らかな差迫つた危険を及ぼすことが予見されるときは,これを許可せず又は禁止することができる旨の規定を設けることも,これをもつて直ちに憲法の保障する国民の自由を不当に制限することにはならないと解すべきである。」として,明白かつ現在の危険の法理のように読める判示部分があります。
(5) 反論1-1:集団暴徒化論
 これに対し,被告としては,いわゆる集団暴徒化論を展開し,予防的な制約を認めるべきであるから,合理性の基準によるべきであるとの反論があり得ます。ここでは,東京都公安条例事件が参考になります。

東京都公安条例事件(最大判昭35・7・20刑集14-9-1243)【百選Ⅰ89】
「かような集団行動による思想等の表現は,単なる言論,出版等によるものとはことなつて,現在する多数人の集合体自体の力,つまり潜在する一種の物理的力によつて支持されていることを特徴とする。かような潜在的な力は,あるいは予定された計画に従い,あるいは突発的に内外からの刺激,せん動等によつてきわめて容易に動員され得る性質のものである。この場合に平穏静粛な集団であつても,時に昂奮,激昂の渦中に巻きこまれ,甚だしい場合には一瞬にして暴徒と化し,勢いの赴くところ実力によつて法と秩序を蹂躙し,集団行動の指揮者はもちろん警察力を以てしても如何ともし得ないような事態に発展する危険が存在すること,群集心理の法則と現実の経験に徴して明らかである。」


(6) 反論1-2:ルール理論
 また,被告としては,いわゆるルール理論を展開し,県議会の立法裁量を強調することで,合理性の基準に持ち込むことも考えられます。ルール理論とは,戸別訪問事件(最判昭56・7・21刑集35-5-568)【百選Ⅱ173】伊藤正己裁判官補足意見を指します。

戸別訪問事件(最判昭56・7・21刑集35-5-568)【百選Ⅱ173】
伊藤正己裁判官補足意見
「選挙運動においては各候補者のもつ政治的意見が選挙人に対して自由に提示されなければならないのではあるが,それは,あらゆる言論が必要最少限度の制約のもとに自由に競い合う場ではなく,各候補者は選挙の公正を確保するために定められたルールに従つて運動するものと考えるべきである。法の定めたルールを各候補者が守ることによつて公正な選挙が行われるのであり,そこでは合理的なルールの設けられることが予定されている。このルールの内容をどのようなものとするかについては立法政策に委ねられている範囲が広く,それに対しては必要最少限度の制約のみが許容されるという合憲のための厳格な基準は適用されないと考える。」


 本件において,条例①3条1項4号による制限は,条例②14条1項2号・3号を具体化したものであるところ,条例②は住民投票の際のルールを定めたものであることから,ルール理論の適用をすることができるとの反論は説得力があるように思います。
(7) 私の見解
もっとも,集団暴徒化論については,批判が多いところです。また,ルール理論についても,戸別訪問のように一律禁止により恣意的な運用はなされない場合と異なり,条例①及び②の要件は抽象的であり,公安委員会が裁量を適切に行使できるか疑問が残るところです。法令審査の段階で十把一絡げに抽象的利益に基づく規制を認めることは,少数者の表現,特に反政府的な表現の自由が軽視される危険性が十分にありますから,個別的・具体的に当該集団運動が暴徒化するか否かについて,客観的かつ慎重な判断を要求するべきでしょう。
表現の自由の重要性に照らすと,「交通事故」を制約理由とすることは格別,「騒音被害」や「売上げの減少」は,デモ行為に当然付随するものであることから,受忍限度にとどまるというべきでしょう。また,「交通事故」についても,集団運動がなくとも発生する可能性があるわけですから,今回の集団運動が原因となる事故が発生する等の事情がない段階では,抽象的な不安感にすぎません。そのため,このような抽象的な不安感で規制することは,生命・身体を保護するという目的との関係で,手段の実質的関連性を欠くといえるでしょう。
そこで,条例②14条1項2号の「平穏な生活環境を害する行為」については生命・身体・財産を害する限度同3号の「商業活動」については積極的な営業妨害行為の限度で合憲である,というべきです。また,条例①3条1項4号は,条例②14条1項2号及び3号に掲げる行為がなされることが「明らかであるとき」と規定しているところ,当該行為がなされる明らかに差し迫った危険が客観的事実に照らして認められることをいう限度で合憲とするべきでしょう。

5 争点②(処分①の合憲性)
(1) 規制態様
 処分①については,Aの集団運動をする自由が制約されていること,当該自由は表現の自由として憲法21条1項により保障されていることは,上記のとおりです。
 処分①の最大の争点は,処分①が憲法上禁止されるべき言論弾圧か否かです。答案上では,内容着目規制か内容中立規制か否かという対立軸でもいいのかもしれません。
 この点につき,原告であるAは,「デモ行進を不許可としたことは,県の重要な政策問題に関する意見の表明を封じ込めようとするものであり,憲法上問題がある」と発言していることから,処分①は言論弾圧であり憲法上禁止されるべきものであると主張するでしょう(少なくとも,内容着目規制であるから,その処分は極めて厳格な要件の下で許容される,と主張するべきです。)。
(2) 反論2:内容中立規制・間接的規制
 これに対し,被告は,言論弾圧ならば当初からデモ活動を許可しないであろうと考えられるところ,これまでAに対して2回のデモ行進を許可していたことから,禁止されるべき言論弾圧ではない,との反論が想定されます。また,第2回のデモ行進の際,実際に交通渋滞が発生したこと,市民や町内会から交通事故が起きることへの不安や騒音被害を訴える苦情や飲食店の売上げが減少したとの苦情がB県に寄せられたことから,処分①は,行動に伴う弊害を防止するための間接的制約である,との反論も想定されます。
 意外と知られていないのですが,言論弾圧か否か,という点は,泉佐野市民会館事件(最判平7・3・7民集49-3-687)【百選Ⅰ88】で問題となりました。

泉佐野市民会館事件(最判平7・3・7民集49-3-687)【百選Ⅰ88】
「もとより,普通地方公共団体が公の施設の使用の許否を決するに当たり,集会の目的や集会を主催する団体の性格そのものを理由として,使用を許可せず,あるいは不当に差別的に取り扱うことは許されない。しかしながら,本件において被上告人が上告人らに本件会館の使用を許可しなかつたのが,上告人らの唱道する関西新空港建設反対という集会目的のためであると認める余地のないことは,前記一の4(一)(2)のとおり,被上告人が,過去に何度も,上告人国賀が運営委員である「泉佐野・新空港に反対する会」に対し,講演等のために本件会館小会議室を使用することを許可してきたことからも明らかである。また,本件集会が開かれることによって前示のような暴力の行使を伴う衝突が起こるなどの事態が生ずる明らかな差し迫った危険が予見される以上,本件会館の管理責任を負う被上告人がそのような事態を回避し,防止するための措置を採ることはやむを得ないところであって,本件不許可処分が本件会館の利用について上告人らを不当に差別的に取り扱ったものであるということはできない。それは,上告人らの言論の内容や団体の性格そのものによる差別ではなく,本件集会の実質上の主催者と目される中核派が当時激しい実力行使を繰り返し,対立する他のグループと抗争していたことから,その山場であるとされる本件集会には右の危険が伴うと認められることによる必要かつ合理的な制限であるということができる。」


 このように,泉佐野市民会館事件では,①泉佐野市は,原告らの団体に対し,過去に何度も市民会館を貸していたこと,②本件集会の開催により暴力の行使を伴う衝突が起こる等の事態が生ずる明らかな差し迫った危険が予見されることから,内容中立規制ではない,と判断されました。本件においても,①B県は過去に2回デモ行進を許可したことがあること,②少なくとも苦情が寄せられたことは認められます。
(3) 私の見解
 もっとも,①の点については,泉佐野市民会館事件と異なり2回のみしか許可されていないこと,住民投票日が近づいてきて一層市民の関心が高まっているタイミングでの不許可処分であることから,内容中立規制であるとの論拠としては不足しているように思います。また,②の点についても,Aのデモは拡声器等を使用せず,ビラやゴミを配ることのない平和的なものであり,単なる苦情があったことをもってして,内容中立規制であるというのも厳しい感じがします。ただし,B県では「知事と県議会が激しく対立」していることから,公安委員会に特定の言論の弾圧をする動機があると認定することも困難であるように思います。これらを総合的の考えると,少なくとも,禁止されるべき言論弾圧であるとはいえないという印象があります。
 次に,処分①は,条例①及び②の要件に該当するかを論じる必要があります。上記の通り,条例②14条1項2号の「平穏な生活環境を害する行為」については生命・身体・財産を害する行為同3号の「商業活動」については積極的な営業妨害行為条例①3条1項4号の「明らかであるとき」については,明らかに差し迫った危険が客観的事実に照らして認められることをいうと解されます。
 本件において,Aのデモ行進が不許可とされた主な理由は,①「交通事故が起きることへの不安」,②「騒音被害を訴える苦情」,③「飲食店の売上げが減少したという苦情」の3つですね。しかし,①については,交通事故は生命・身体の被害を伴うことから「平穏な生活環境を害する」といえそうですが,住宅街の道路を迂回路として使う車が増えただけで,実際に交通事故は発生していません。そのため,交通事故の発生を伴う行為が「明らかである」ということはできません。また,②については,Aらは拡声器等を使用していないことから,シュプレヒコールや参加者の行進する足音等が騒音とされているにすぎず,幹線道路の騒音に比して過大な騒音であるということもできません。そうすると,「平穏な生活環境を害する行為」ということはできません。さらに,③についても,売上げの減少は,幹線道路沿いという好立地であるならば,デモ行進に伴うものとして当然予想されるべきものであること,ビラやゴミをまき散らす等の積極的な営業妨害をしているわけではないことから。「商業活動を害する行為」とはいえません。
 したがって,処分①は,条例①及び②の要件を満たさず,違憲・違法であるといえます。

6 争点③(処分②の合憲性)
(1) 被制約利益の特定
 処分②により,学生Aは「格差問題と憲法」をテーマにした講演会(以下「本件講演会」という。)の開催をすることができないことから,Aが講演会を開催する自由が制約されているといえます。また,経済学部のゼミによる「グローバリゼーションと格差問題:経済学の観点から」をテーマとした講演会の教室使用願を許可したが,Aの申請を不許可としている点で,異別取扱いがあるといえます。
(2) 憲法上の保護
 同自由は,Aが所属する憲法ゼミにおける学問研究の一環として本件講演会が開催されていることから,学問研究の自由として,憲法23条により保障されているといえます。また,異別取扱いをされない利益については,法の下の平等として,憲法14条1項により保護されているといえます。ただし,憲法14条1項の問題は,どちらかというとメインではないように思います。なぜなら,平等取扱いについては,表現の自由の内容着目規制の原則禁止として,憲法21条1項の中でも問題にすることができるためです。
(3) 教室使用規則の限定解釈
 Aとしては,教室使用規則にいう「政治的目的」とは,カンパや投票を呼び掛けたり,一定の立場を支持したりする場合を指すところ,本件講演会は「格差問題と憲法」という憲法の研究活動であること,知事の施策方針に賛成する県議会議員と反対する県議会議員を講演者として招いていることから,「政治的目的」には該当しない,と主張するでしょう。
すなわち,大学の教室は,学生の自主的な研究活動を行うための施設であることから,原則として使用を許可すべきものであるところ,不許可処分が許容されるのは,学問の目的ではないことが明らかであるものに限定されるというべきです。本件において,Aは「格差の是正」を訴えるという特定の意見に基づくデモ行進を主催していましたが,本件講演会は「格差問題と憲法」という中立的なテーマであること,知事の施策方針に対し賛成・反対双方の立場の者を招いていること,権力の統制を目的とする憲法学は政府に対する批判を含む学問であることから,学問の目的でないことが明らかであるとはいえません。したがって,Aの教室使用申請は,「政治的目的」とはいえないことから,処分②は憲法23条に反する,との主張が可能ですね。
また,仮に裁量統制審査であるとしても,判断の基礎となっている「Aらが中心となって行ったデモ行進が県条例に違反すること」は事実誤認であり,「ニュースで流されたAの発言は県政批判に当たるものであること,また講演者が政治家であること」についても,憲法学の批判的性格であることや県政をよく知るものであることにつき考慮不尽があると主張することも可能でしょう。
(4) 反論3-1:学問の自由の保護範囲外
これに対し,大学側から,本件講演会は学問目的ではなく,政治的目的のものであるから,本件講演会をする自由は,学問の自由としては保障されず,集会の自由にすぎない,との反論が想定されます。集会の自由にすぎないとされると,大学は集会場所ではないことから,原告としては負け筋になるというわけです。
この点については,東大ポポロ事件(最大判昭38・5・22刑集17-4-370)【百選Ⅰ93】が参考になるでしょう。

東大ポポロ事件(最大判昭38・5・22刑集17-4-370)【百選Ⅰ93】
学生の集会が真に学問的な研究またはその結果の発表のためのものでなく,実社会の政治的社会的活動に当る行為をする場合には,大学の有する特別の学問の自由と自治は享有しないといわなければならない。また,その集会が学生のみのものでなく,とくに一般の公衆の入場を許す場合には,むしろ公開の集会と見なされるべきであり,すくなくともこれに準じるものというべきである。
 本件のA演劇発表会は,原審の認定するところによれば,いわゆる反植民地闘争デーの一環として行なわれ,演劇の内容もいわゆる松川事件に取材し,開演に先き立つて右事件の資金カンパが行なわれ,さらにいわゆる渋谷事件の報告もなされたこれらはすべて実社会の政治的社会的活動に当る行為にほかならないのであつて,本件集会はそれによつてもはや真に学問的な研究と発表のためのものでなくなるといわなければならない。また,ひとしく原審の認定するところによれば,右発表会の会場には,B大学の学生および教職員以外の外来者が入場券を買つて入場していたのであつて,本件警察官も入場券を買つて自由に入場したのである。これによつて見れば,一般の公衆が自由に入場券を買つて入場することを許されたものと判断されるのであつて,本件の集会は決して特定の学生のみの集会とはいえず,むしろ公開の集会と見なさるべきであり,すくなくともこれに準じるものというべきである。そうして見れば,本件集会は,真に学問的な研究と発表のためのものでなく,実社会の政治的社会的活動であり,かつ公開の集会またはこれに準じるものであつて,大学の学問の自由と自治は,これを享有しないといわなければならない。したがつて,本件の集会に警察官が立ち入つたことは,大学の学問の自由と自治を犯すものではない。」


 このように,東大ポポロ事件判決は,①反植民地闘争デーの一環として行われたこと,②松川事件(東北本線で起きた列車往来妨害事件に関する不当逮捕が問題となった事件)を題材にした演劇であること,③松川事件の資金カンパをしたこと,④渋谷事件の報告をしたことのすべてが実社会上の政治的社会的活動であると判断しています。本件においても,③カンパはしていないものの,①「格差の是正」を訴えるデモ行進がゼミの研究活動の一環であるシンポジウム「格差問題を考える」と連続性を有すること,②④第3回デモ行進の不許可処分を扱うことから,実社会の政治的社会的活動であるという反論は十分可能でしょう。
 もっとも,本件は,憲法ゼミの学生による講演会であること,担当であるC教授の承諾を得ていることから,大学公認の学内の劇団による演劇である東大ポポロ事件とは異なります。すなわち,演劇は公権力に対する批判を当然に含むものではありませんが,憲法学は国家権力を拘束する道具でもありますから,公権力に対する批判を当然に含みます。したがって,東大ポポロ事件のように,②松川事件や④渋谷事件を扱ったというだけで,政治的活動であるということは適切ではありません。また,①デモ行進では「格差の是正」という特定の立場を掲げているものの,本件講演会では「格差問題と憲法」という中立的な立場であり,双方の立場の県議会議員を招いていることから,本件講演会が「政治的活動」であるということは困難でしょう。
したがって,本件講演会を開催する自由は,学問の自由として保障されると解するべきでしょう。
(5) 反論3-2:大学の自治との調整
次に,大学側から,裁判所が大学内部の処分につき積極的に判断をすることは,国家権力による大学の自治の侵害であるから,裁量統制審査に限定されるべきである,との反論が想定されます。
しかし,大学の自治の趣旨は,国家機関による大学への介入を防止することで,個々の教授の研究の自由を保障する点にあると解されます。そのため,教室使用規則の該当性は,明らかに不合理でない限り,B県立大学ではなく,個々の教授の判断に委ねるべきです。実際に,B県立大学は,ゼミ活動目的での申請であり,かつ,当該ゼミの担当教授が承認していれば教室の使用を許可する,という運用を行ってきているのは,教授の学問の自由に対する配慮であるといえます。したがって,C教授の判断が明らかに不合理でない限り,教室使用申請を認めるべきである,ということができるでしょう。
(5) 反論3-3:「政治的目的」該当性
次に,大学側からは,大学の自治を尊重するために,政治とは外見上も一定の距離を確保するべきであるから,教室使用規則にいう「政治的目的」とは,政治的活動のみならず,広く政治的活動との関連性が認められるものをいうと解するべきであり,C教授の判断は明らかに不合理である,との反論が想定されます。要するに,本件講演会が政治的社会的活動ではなく,学問の自由として保障されるとしても,教室使用規則による合理的な制限には服するという反論です。
この点については,寺西判事補事件(最大判平10・12・1民集52-9-1761)【百選Ⅱ196】が参考になります。

寺西判事補事件(最大判平10・12・1民集52-9-1761)【百選Ⅱ196】
「本件言動の裁判所法五二条一号該当性特定の法律を制定するか否かの判断は,国の唯一の立法機関である国会の専権に属するものであるところ,裁判官が,一国民として法律の制定に反対の意見を持ち,その意見を裁判官の独立及び中立・公正を疑わしめない場において表明することまでも禁止されるものではないが,前記事実関係によれば,本件集会は,単なる討論集会ではなく,初めから本件法案を悪法と決め付け,これを廃案に追い込むことを目的とするという党派的な運動の一環として開催されたものであるから,そのような場で集会の趣旨に賛同するような言動をすることは,国会に対し立法行為を断念するよう圧力を掛ける行為であって,単なる個人の意見の表明の域を超えることは明らかである。このように,本件言動は,本件法案を廃案に追い込むことを目的として共同して行動している諸団体の組織的,計画的,継続的な反対運動を拡大,発展させ,右目的を達成させることを積極的に支援しこれを推進するものであり,裁判官の職にある者として厳に避けなければならない行為というべきであって,裁判所法五二条一号が禁止している「積極的に政治運動をすること」に該当するものといわざるを得ない。」


 寺西判事補事件判決は,パネリストとして出席しなくとも,①本件集会が本件法案を悪法と決めつけ,廃案に追い込むことを目的としていること,②少なくとも本件集会の趣旨に賛同する旨の発言をしたことから,「積極的に政治運動をすること」に該当するとしています。しかし,本件では,①講演会そのものは「格差の是正」を訴えるものではないこと,②Aが発言しているのはデモ行進の不許可についてであり,「格差の是正」については何らの主張をしていないことから,本件講演会が「政治的目的」であるということは,やはり難しいでしょう。
 したがって,C教授の判断が不合理であるとはいえず,処分②は違憲・違法であるといえそうです。
(6) 補論1:部分社会の法理
 なお,大学側からの反論として,裁判所が教室使用申請処分という大学の内部行為につき判断をすることは部分社会の法理に反する,との反論を書くか悩んだ方もいらっしゃるかもしれません。しかし,富山大学専攻修了不認定事件(最判昭52・3・15民集31-2-280)によると,このような反論を認めることはできません。
 なお,部分社会の法理を展開した富山大学単位不認定事件(最判昭52・3・15民集31-2-234)【百選Ⅱ201】と日付は同じですが,事件そのものは別物ですのでご注意ください。

富山大学専攻修了不認定事件(最判昭52・3・15民集31-2-280)
「国公立の大学は公の教育研究施設として一般市民の利用に供されたものであり,学生は一般市民としてかかる公の施設である国公立大学を利用する権利を有するから,学生に対して国公立大学の利用を拒否することは,学生が一般市民として有する右公の施設を利用する権利を侵害するものとして司法審査の対象になるものというべきである。」



7 補論2:国賠法上の違法性
 国賠法上の違法性が,違憲性から直ちに認められるかは,違法・過失二元的判断と違法一元的判断との兼ね合いがあるところですね。いずれの立場に立つにせよ,処分①及び処分②の違法性については免責特権の問題となる国会による立法作用とは異なることから,本問の中心的な争点ではないでしょう。

8 まとめ
 いかがでしょう。本問は,関連する判例法理を「はしご」することで解くことができるはずの問題であることが伝わりましたでしょうか。司法試験の憲法においては,短答式試験も含め,判例学習が超重要であることを実感していただければ幸いです。
 このあたりは,法学セミナー701~702号の特集「司法試験採点実感にみる法律学修法」が非常に参考になります。憲法については,701号2頁以下「座談会 第1部「出題趣旨」「採点実感」を読む」(憲法は山本龍彦先生(慶應義塾大学准教授)が担当)や同号14頁以下の宍戸常寿先生の「憲法における事例問題の考え方/書き方」という記事です。
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また,法セミ701号123頁の「ブック・レビュー」では,私の師匠である小山剛先生が曽我部ほか『憲法論点教室』の書評を書かれております。基本書などについては,別に機会に紹介したいですね。
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第7回 憲法上の権利の享有主体性

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お久しぶりです。
司法試験やら,憲法ガールやらと,連載を放置しておりましたね。

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前回までは,憲法上の権利の基本について学習しました。
主観的権利と客観法の区別,自由権と請求権の区別,請求権の特徴,新しい人権について,ひととおりのイメージをつかんでいただけたとは思います。

今回は,いわゆる人権享有主体性についての論点を扱います。

ただし,私は,「人権」は人が生まれながらに有する自然権を指し,私人間でも問題となるものであると考えています。
そのため,対国家的権利については,「人権」ではなく,「憲法上の権利」と呼称しております。
したがって,「憲法上の権利の享有主体性」という用語を使いますので,その点がご了承ください。


1 はじめに

(1) 享有主体性の議論はマイナー
 さて,憲法上の権利についての基本的なところは,イメージがついてきたと思います。憲法上の権利に関連する論点として,憲法上の権利の共有主体性(=人権享有主体性)の議論があります。私の知るところ,この論点が憲法訴訟においていかなる意味をなすか,ということを分析した論文は,見当たりませんでした。そのため,この部分は,本連載の独自説の色が極めて強いことを最初に申し上げておきます。

(2) 必要性が高いと審査基準が下がる?
享有主体性の論証パターンの中には,次のような論証を目にすることがあります。
「未成年の憲法上の権利は,未成年を保護する必要性が高いから,審査基準が緩やかになる」
しかし,この理解は間違いです。保護の必要性(=規制の必要性)が高いから,審査基準が下がるというのは,少数者保護という憲法の理念には相反しますので,一般的な議論ではないように感じます。それこそ,真に必要性が高いのであれば,審査基準を下げることなく,厳格審査であってもクリアするはずでしょう。おまけに,未成年の憲法上の権利に関する岐阜県青少年保護条例(最判平元・9・19刑集43-8-785)【百選Ⅰ56】の伊藤正己裁判官補足意見を学習していないことまで露呈してしまいます。したがって,このロジックを採用するべきではありません。

(3) パターナリズムに基づく制約は審査基準が下がる?
もう1つ,たまに見かけるのは,次のような論証です。
「パターナリズムに基づく制約であるから,違憲審査基準が下がる」
しかし,この論証は憲法の理解を全くしていないものに等しく,相当危険です。パターナリズムに基づく制約は,芦部憲法に記載のない部分のため手薄になりがちですが,平成21年新司法試験で出題されている重要論点ですから,これを機にしっかりと学習していきましょう(平成21年新司法試験の解説は,残念ながらこの連載が終わってからになります。ヒントは,「なぜ,がんの告知は本人ではなく親族の方が先なのか?」という命題です。)。
パターナリズムに基づく制約とは,「あなた自身のためにならないからという理由で権力が後見的に(パターナリスチックに)その人の生に干渉すること」(佐藤135頁)をいいます。自由国家思想の下では,憲法上の権利が制約されることが許容されるのは,原則として,他者を加害する場合に限定されます。考えてみれば,個人の尊重の理念がある以上,何が幸福かを決めるのは自分自身であり,人それぞれ違う基準を持っているはずです。そうすると,国家が勝手に「あなたのため」と決めつけ,ある行為を禁止することは,国民の自己決定権に対する介入といえます。したがって,パターナリズムに基づく制約は,成人との関係では,原則として許されません(答案では,目的審査で論じることになるでしょう。)。

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もっとも,ある自己決定が不十分な判断に基づいてなされる場合,当該自己決定を実質化させるために十分な情報提供を行うことは,禁止されるべきではないでしょう。また,未成年は,そもそも自己決定が未熟ですから,一定の制限をすることも許容されるでしょう。しかも,未成年の場合,成人になれば当該禁止が解除されるという期限付き制限にすぎません。このようにみてくると,パターナリズムに基づく制約であるから審査基準が下がる,というのは誤りであることがわかります(※7-1)。

※7-1 この誤解が生じた原因は,未成年に対する制約+パターナリズムに基づく制約の事例において,審査基準が下がるという論証を「パターナリズムに基づく制約=審査基準が下がる」と誤って定式化してしまった点にあるのでしょう。

なお,「一見すると本人のための制約であっても,本人の行為が他者または公共に対して影響を与えうる場合には,その行為の禁止は許される」とされます(作法63頁・欄外番号330)。その一例として,バイク搭乗時のヘルメット着用義務につき,交通事故の処理が遅延し,道路が混雑することを防止する目的を有するとして合憲としたドイツの判決が紹介されています。

そうすると,未成年者の憲法上の権利は,成人と同様に保障され,成人と同様の審査基準になるのでしょうか?この問いに答える前に,享有主体性についての総論を学習していきましょう。

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(4) 享有主体性の2つの視点
何事も,まずは原則を確認しなければなりません。享有主体性の議論にしても,その原則を修正し,審査基準やあてはめを変化させる議論であることに変わりありません。そこで,憲法が想定している享有主体の典型は何かというと,「人格的に自律した,自己決定ができる,日本国籍を有する成人」です。憲法が無償の義務教育を規定している(憲法26条2項)ことから,成人であれば,人格的に自律した,自己決定ができるという擬制があると考えられます。
享有主体性の議論を整理するにあたっては,この原則たる「日本国籍を有する成人」と異なる点に着目することになります。その際には,当該享有主体が有する特徴が,次の2つのいずれに該当するのかを把握することが大切です。1つめは,①憲法上の権利の保障の程度が変わるもの,2つめは,②異なる制約根拠に服するにすぎず,憲法上の権利の保障の程度に差異はないものです。違憲審査基準に変化をもたらす要素は①のみであり,②はあてはめの際に考慮できる事実が増えるにすぎません。

2 享有主体性各論

 それでは,上記の2つの視点に基づき,各享有主体につき検討していきましょう。

(1) 未成年
 未成年は,成人と異なり,類型的に人格的に未熟であり,その判断能力も劣るということができます。その証拠に,憲法15条3項は,「公務員の選挙については,成年者による普通選挙を保障する。」として,未成年と成年とを区別しています。この事実につき,視点①から評価すると,人格的で未熟であり,その判断能力も劣るような未成年は,人格的に自律した自己決定の可能な成人と異なり,その自由に委ねることは適当ではないということになります。したがって,憲法上の権利の保障の程度は下がり,審査基準が下がるといえます。
この点は,岐阜県青少年保護条例(最判平元・9・19刑集43-8-785)【百選Ⅰ56】の伊藤正己裁判官補足意見でも指摘されているところです。曰く,「知る自由の保障は,提供される知識や情報を自ら選別してそのうちから自らの人格形成に資するものを取得していく能力が前提とされている。青少年は,一般的にみて,精神的に未熟であつて,右の選別能力を十全には有しておらず,その受ける知識や情報の影響をうけることが大きいとみられるから,成人と同等の知る自由を保障される前提を欠く」としている点です。
また,未成年が未熟であるならば,その自己決定権に介入することも一定程度許されるでしょう。そのため,視点②からは,成人と異なり,パターナリズムに基づく制約が許容される範囲が広くなるでしょう。しかし,だからといって,審査基準が下がるわけではありません。審査基準が下がるのは,あくまでも,憲法上の権利の保障の程度が下がるからであり,パターナリズムに基づく制約が許されるからではありません。
具体的にどのように論じるべきかというと,審査基準定立の前で,視点①の憲法上の権利としての保障の程度を論じ,目的審査において,視点②の自己決定権への介入の許容を論じることになるでしょう。しかし,だからといって,即合憲,というわけではありません。未成年といえでも,成長に応じて規制を段階的にするべきとの立論も可能です。また,そもそも,人間というのは,失敗を重ねて学ぶものであるため,一切合財を「危険である」と決めつけて触れさせない過保護な政策は,かえって自律を阻害するのではないでしょうか。このように論じることができるならば,岐阜県青少年保護条例事件についても,違憲であるとの結論に到達することが可能かもしれませんね。

(2) 外国人
 次に,外国人の憲法上の権利について考えましょう。まず,誤解されている方が多いようですが,人が生まれながらに有するとされる人権が保障されるからといって,「憲法上の権利」が保障されるわけではありません。もちろん,憲法上の権利が人権(=自然権)に由来するものであることは否定できませんが,だからといって両者を同一視するべきではありません。それゆえ,この連載も,小山先生の作法も,宍戸先生の書籍も,「人権」ではなく,「憲法上の権利」という表現を採用しているわけです。

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このことは,マクリーン事件判決(最大判昭53・10・4民集32-7-1223)【百選Ⅰ2】からもうかがえます。同判決は,「憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は,権利の性質上日本国民をその対象としていると解されるものを除き,わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ」として,単なる基本的人権ではなく,憲法上の権利についての保障を述べています。
外国人の憲法上の権利については,国籍と国境の関係で,非常に難しい問題が潜んでいます。マクリーン事件判決は,「国際慣習法上,国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく,特別の条約がない限り,外国人を自国内に受け入れるかどうか,また,これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを,当該国家が自由に決定することができるものとされている」ことから,「憲法上,外国人は,わが国に入国する自由を保障されているものでない」としています。その上で,「外国人に対する憲法の基本的人権の保障は,右のような外国人在留制度のわく内で与えられているにすぎないものと解するのが相当であつて,在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障,すなわち,在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情としてしんしやくされないことまでの保障が与えられているものと解することはできない」としています。
最高裁は,「外国人には国民と異なり入国する自由がなく,どのような外国人を入国させるかは国家の自由であること」を前提に,結局,外国人の憲法上の権利の保障も,その「わく内」で与えられるという非常に薄弱なものであると理解しているのです。この点については,安念潤司「『外国人の人権』再考」芦部信喜先生古稀祝賀『現代立憲主義の展開・上』(有斐閣,1993年)が痛快に指摘しています。

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このように,最高裁判例によると,通常の外国人の場合,視点①の権利の保障の程度が極めて薄弱である,と考えていることになります。なぜなら,そもそも日本国に在留すること自体が自由でないわけですから,いくら在留中に憲法上の権利が保障されるとしても,在留が否定されれば意味がないわけです。
しかし,この点については,憲法上の権利が自然権威由来することや国際協調主義を重視することで,「外国人在留制度のわく内」で最大限尊重するべきであるとの反論したいところです。そうすると,権利の保障の程度に変化を与える視点①の性質ではなく,単に日本国民と異なる制約に服するという意味で視点②の性質を有するにすぎずないといえるでしょう。その上で,わが国の国民主権原理につき抵触するのか,わが国の国益を本当に害するのかにつき,実質的な審査をするべきである,との立論をすることができるように思います。

もっとも,特別永住者については,通常の外国人はもちろん,一般永住者と同列に論じるべきではありません。特別永住者とは,いわゆる「在日朝鮮人」(韓国籍含む)や「在日台湾人」のことであり,「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」により定められた地位です。1895年の台湾編入や1910年の日韓併合により,かつては日本国籍を有していた者及びその子孫が,特別永住者に該当します。特別永住者は,かつて日本国籍を有していたことから,強制退去の要件が極めて限定されていること,再入国許可が容易であり,指紋照合も免除されていることなど,一般永住者よりも手厚く在留権が保護されています。そうすると,視点①として違憲審査基準を下げる前提である,入国の自由がないという事情が認めらません。そこで,マクリーン事件の判旨の射程を限定し,「外国人在留制度のわく内」に限らず,原則として,日本国民と同程度の保障を及ぼすべきであると考えることもできます。
この点につき,東京都管理職選考受験訴訟(最大判平17・1・26民集59-1-128)【百選Ⅰ6】が「外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは,本来我が国の法体系の想定するところではない」,「この理は,前記の特別永住者についても異なるものではない」と判断している点については,反論の余地があります。そもそも,国籍や国境というものは,所与の原則形態があるわけではありません。「国家を構成する「国民」とは,同じ所に住み,同じ言葉を話す,ということが,その核心的内容である」(青柳幸一「外国人の選挙権・被選挙権と公務就任権」ジュリスト1375号(有斐閣,2009年)64頁)という指摘からもうかがえるように,ある一時点における歴史的事実を捉えて,国民か否かを決めているにすぎません。このように考えると,特別永住者につき,単に「国籍」だけを理由にすることの是非について,もう一度問い直す必要があります。その際には,特別永住者の帰化が容易になっていること,韓国において選挙権と一部の被選挙権が在外国民に付与されたことについて,どのように考えるかがカギになりそうですね。帰化が容易であるならば帰化をすればいい,わが国において選挙権を認めるとすれば2つの国で選挙権が認められることになってしまう,という国側の反論が想定できますね。

(3) 団体
 次に,いわゆる法人の人権(=団体の憲法上の権利)について考えてみましょう。八幡製鉄事件判決(最大判昭45・6・24民集24-6-625)【百選Ⅰ11】は,「憲法第3章に定める国民の権利および義務の各条項は,性質上可能なかぎり,内国の法人にも適用されるものと解すべきであるから,会社は,自然人たる国民と同様,国や政党の特定の政策を支持,推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである。政治資金の寄附もまさにその自由の一環であり,会社によつてそれがなされた場合,政治の動向に影響を与えることがあつたとしても,これを自然人たる国民による寄附と別異に扱うべき憲法上の要請があるものではない。」として,自然人たる国民と同程度の権利保障を与えています。
 しかし,平成23年出題趣旨3頁は,「法人の人権享有主体性について長々と論じる答案が,少なからずあった」として,「長々と」論じることを否定しています。むしろ,私自身は,本問で享有主体性の論点を書くこと自体が不要であると思います。そもそも,最高裁判例で当該論点が問題となったのは,団体と構成員との対立事例ケースばかりです。その中で,実体法上の解釈問題において,団体には憲法上の権利がないから,自然人たる構成員の憲法上の権利を侵害することは,公序良俗に反し無効である,との主張が組み立てられているのです。単に団体が原告になっていることをもって,当該論点を論じるのは,安直すぎますし,そのような最高裁判例はありません。したがって,「長々と」論じるのは問題外であるとして,書いても減点されることはないでしょうが,果たして書く必要があるのかは疑問です(もっとも,駒村連載では書くことを推奨していると読める記載もあるため,書いた方が無難でしょうが。)。このように,司法試験との関係では,この論点は団体内部の対立事例の際の挨拶程度としてとらえ,その後のあてはめを学習するべき性質のものといえるでしょう。
 なお,この論点については,団体は,自然人と異なり人格的価値を有しないから,視点①憲法上権利の保障の程度が下がる,との反論があり得ます。しかし,団体の権利の背後には,構成員たる自然人の権利がありますから,そのような反論には疑問があります。他方,マスメディアという団体については,通常の自然人と異なり,社会的役割が強いことから,視点①憲法上の権利の保障を強めるべきであるとの主張は,それなりに首肯できるものがあります。ただし,その代償として,公共財として,国民全体の利益という視点からの制約に服することも甘受されるべきでしょう。

(4) 刑事施設被収容者
 刑事施設被収容者については,未決勾留と既決勾留で分けるのが一般的ですね。未決勾留とは,刑事裁判が確定していない身体的拘束を指します。他方,既決勾留とは,刑事裁判が確定し,矯正監護のために種々の権利の制限を受けている身体的拘束を指します。
 未決勾留の状態では,無罪推定原則の原則があることから,視点①憲法上の権利の保障の程度は,一般人と同程度であると考えるべきです。よど号ハイジャック記事抹消事件(最大判昭58・6・22民集37-5-793)【百選Ⅰ18】が,「逃亡及び罪証隠滅の防止という勾留の目的」や「監獄内の規律や秩序の維持のため」という制約根拠をあげているのは,単に視点②として,一般人と異なる制約に服することを指摘したにすぎず,憲法上の権利の保障の程度が低いと述べたわけではないでしょう。お馴染みの憲法秩序の構成要素説は,通常人とは異なる制約に服するという視点②のお話です(※7-2)。

※7-2 ただし,同判決が,閲読の制限の要件である「当該新聞紙,図書等の閲読を許すことによつて監獄内における規律及び秩序の維持に放置することができない程度の障害が生ずる相当の蓋然性が存するかどうか」につき,「監獄の長による個個の場合の具体的状況のもとにおける裁量的判断にまつべき点が少なくない」として,刑事施設の長の裁量論として片づけた点は,批判するべきポイントです。

 他方,有罪が確定した既決勾留については,矯正監護の必要から,視点①憲法上の権利の保障の程度が下がるといえます。その根拠も,お馴染みの憲法秩序の構成要素説です。犯罪につき有罪判決を受けた者は,人格的に自律しているとは言いにくいでしょうから,審査基準が下がるのもやむを得ません。

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(5) 公務員
 最後に,公務員の憲法上の権利について検討しましょう。
 公務員については,政治的行為の禁止が問題となった,猿払事件判決(最大判昭49・3・25刑集28-9-393)【百選Ⅰ15】が重要です。同判決は,「当該公務員の管理職・非管理職の別,現業・非現業の別,裁量権の範囲の広狭などは,公務員の政治的中立性を維持することにより行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保しようとする法の目的を阻害する点に,差異をもたらすものではない」として,国家公務員の政治活動の一律禁止を合憲であると判断していました。しかし,近年,堀越事件判決(=目黒事件)(最判平24・12・7)及び世田谷事件判決(最判平24・12・7)において,処罰の対象を「公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為」に限定するという事実上の判例変更がなされ,議論がさかんになっています。

 ともあれ,これらの判決は,共通して,制限目的につき「行政の中立的運営が確保され,これに対する国民の信頼が維持されること」の2つを挙げます(※7-3)。しかし,このような立法目的を理由に憲法上の権利を制約できるのは,公務員という身分の特殊性に由来するでしょう。逆に,この理由で一般国民の表現の自由を規制することは許されないはずです。その意味で,視点②として,公務員であるがゆえに,規制根拠となる事由が増えると理解することができます
 しかし,だからといって,視点①のように,憲法上の権利の保障の程度を下げてもいいかは,別の次元のお話です。視点②が増えることで,結果的に規制が合憲となる範囲が多くなるとしても,審査基準が緩やかになるわけではないでしょう。仮に,百歩譲って審査基準が緩やかになる場合があるとしても,「全体の奉仕者」(憲法15条2項)となるのは,職務遂行中の行為など,指揮監督権の範囲内の制限に限定されるべきであり,休日についてまで規制することを正当化するべきではありません(君が代伴奏拒否事件,君が代起立斉唱強制事件については,職務時間中の問題ですから,これに該当するでしょう。)。このように,公務員には,公人と私人の二面性があることを区別して論じるべきです。少なくとも,公務員は強い制限に服する,という論理を単純に展開するべきではありません。

※7-3 このような規制目的の問題点については,今回のテーマと離れてしまうため,割愛いたします。差当り,木村草太「公務員の政治的行為の規制について―大阪市条例と平成24年最高裁二判決」法律時報85巻2号74頁以下が,非常に参考になります。概要をご紹介すると。①行政の中立的運営の確保という目的については,「倫理的な者ならば,職務や公務の現場に,私的な政治的信条を持ち込もうとはしないはず」であり,「刑法には,職権乱用罪などの規定がある」ことから,「倫理観の欠如した公務員がいたとしても,適切に監督し,排除することができるはずである」として,政治的活動の禁止の規制目的としては不足すると指摘しています。また,②国民の信頼の確保という目的についても,「「私的な政治活動をする人は,政治的に偏った仕事をする職業倫理の欠如した人間だ」という差別感情を持つ人の「信頼」にすぎない」として,「結局,差別への迎合を意味しており,それに基づく規制は憲法14条1項の禁ずる国家による「差別」である」という結論を導いています。何とも木村先生らしい論文です。その他,青柳幸一「猿払基準の現在の判決への影響」法学教室388号4頁以下も参照。

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まとめ
・必要性が高いと審査基準が下がる,というのは間違い。
・パターナリズムに基づく規制は,自己決定権に対する介入であるから,原則として許されない。自己決定権を実質化する効果を有するもの(弱いパターナリズム),自己決定権が不十分な未成年に対する規制などが,例外的に許容されるにすぎない。
・憲法上の権利の享有主体として想定されるのは,「自律した,自己決定のできる,成人した日本国籍を有する者」である。
・憲法上の権利の享有主体性を論ずるにあたり,①憲法上の権利の保障の程度が変わるもの,②異なる制約根拠に服するにすぎず,憲法上の権利の保障の程度に差異はないもの,という2つの視点が重要。違憲審査基準に変化をもたらす要素は①のみであり,②はあてはめの際に考慮できる事実が増えるにすぎない。


● 次回予告
 第8回は,「平等原則」です。お楽しみに。


【速報】(問題のみ)平成25年司法試験予備試験 論文式試験問題 憲法 ※解説ではありません!

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予備試験論文式1日目お疲れ様でした!

例のごとく,どの予備校よりも,法務省よりも早く,予備試験の問題を公開します!

問題文の提供してくださった方,本当にありがとうございます。

なお,受験生の精神的な負担を考慮して,予備試験の最終日が終わるまで,一切の解説はいたしません。

問題文のpdfファイルはこちら※1

※1問題文は,提供を受けたものを手打ちしたものであるため,誤字・脱字がある可能性がございますので,ご了承ください。

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[憲 法]

 202*年時点では,衆議院小選挙区選出議員における,いわゆる「世襲」議員の数が増加する傾向にある。「世襲」議員とは,例えば,国会議員が引退する際に,その子が親と同一の選挙区から立候補して当選した場合の当該議員をいう。「世襲」議員には,立候補時において,一般の新人候補者に比べて,講演会組織,選挙資金,知名度等のメリットがあると言われている。このような「世襲」議員については賛否両論があるが,政党A及び政党Bでは,世論の動向も踏まえて何らかの対応策を採ることとし,立候補が制限される世襲の範囲や対象となる選挙区の範囲等について検討が行われた。その結果,政党Aから甲案が,政党Bから乙案が,それぞれ法律案として国会に提出された。
 甲乙各法律案の内容は,以下のとおりである。
  (甲案)政党は,その政党に所属する衆議院議員の配偶者及び三親等内の親族が,次の衆議院議員選挙において,当該議員が選出されている小選挙区及びその小選挙区を含む都道府県内の他の小選挙区から立候補する場合は,その者を当該政党の公認候補とすることができない。
 (乙案)衆議院議員の配偶者及び三親等内の親族は,次の衆議院議員選挙において,当該議員が選出されている小選挙区及びその小選挙区を含む都道府県内の他の小選挙区から立候補することができない。

C政党に所属する衆議院議員Dは,次の衆議院議員選挙では自らは引退した上で,長男を政党Cの公認候補として出馬させようとして,その準備を着々と進めている。Dは,甲案及び乙案のいずれにも反対である。Dは,甲案にも乙案にも憲法上の問題があると考えている。


〔設 問〕
  Dの立場からの憲法上の主張とこれに対して想定される反論との対立点を明確にしつつ,あなた自身の見解を述べなさい。



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今年は議員の世襲制が問題となりましたね。
例のごとく,解説は試験終了までいたしません。
それでは2日目,頑張ってくださいね!


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第8回 平等原則

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第8回 平等原則

 さて,これまでは憲法上の権利の基本的な部分を整理してきました。そこで各論へ,と行きたいところですが,頭を一度リセットしていただくため,平等原則について,先に学習しておきましょう。
 というのも,平等原則は,他の憲法上の権利と異なる異彩を放つ条項であり,その処理手順も独特なものがあります。特に,救済の側面では,これまでの憲法訴訟論の理解が不可欠となります。反面,国籍法判決という素晴らしいリーディングケースがあるため,判例と学説の距離が比較的近い分野です。その意味では,判例と学説に距離がある他の憲法上の権利と比較すると,学習しやすい分野といえます。
 今回は,平等原則の基本,違憲審査基準,違憲となった場合の救済方法の3つについて学習しましょう。

1 平等原則の基本
 
⑴ 平等原則とは
 平等原則は,「平等それ自体は何も求めていない,ただ比較を問題にする「空っぽ(empty)」な要請」(宍戸104頁)といわれることがあります。すなわち,平等原則というのは,違憲とされた場合,自由権のように国家行為を排除しなければならないとか,請求権のように国家行為をしなければならないという事態は発生せず,原則として単に当該国家行為が「違憲である」と宣言するに過ぎません。したがって,どのような国家行為を義務付けるか否かは,別次元の論点となるのです。
 なお,平等原則を「平等権」と称して,主観的権利として扱う見解(急所254頁参照)もあり得ますが,この連載では「平等原則」として統一的に扱うことにします(※8-1)。

※8-1 第6回で学習したように,憲法の規定には,主観的権利と客観法の2種類があるところ,まずは客観法があり,個別化などの事情がある場合には,主観的権利が観念されます。これに対応するように,「憲法14条1項についても,まず<国家は国民を法の下に平等に取り扱わなければならない>という禁止ないし要請(=平等原則)がまずあり,その次に国民個人が国家に対して<法の下で平等に取り扱われる権利>(=平等権)を主張できる,と観念される」(宍戸105頁)と考えることもできます。
 この点,木村先生は「国民と国民を区別することの全てが平等権制約だと解されています」(急所254頁)としていますが,宍戸先生は「平等原則が国家に広く同一取扱いを求めるとすれば,このような強い個別化・主観化の契機が欠けて」いることから,「かような広い「平等」に,他の憲法上の権利と同じ程度に強い憲法的保障を,享受させるわけにはいきません」と指摘しています(宍戸105~106頁)。木村先生は,検閲の禁止等の客観法についても主観的権利として扱う見解ですから,木村説の帰結としては平等権を広くとらえることになります。しかし,これでは司法審査に過剰な期待をするようで,「憲法訴訟は民主主義の例外である」とする私の見解からは,宍戸先生のように考える方が親和的です。
 ただ,何が「平等権」かを確定できないこと,主観的権利と客観法との区別につき原告適格や主張適格の議論と結びつける見解でないため区別の実益が乏しいことから,本連載では「平等原則」という呼称で統一することにします。小山先生も平等権と平等原則について,「区別を厳密に意識する必要はない」と述べています(作法104頁)。


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⑵ 平等審査は三段階審査ではない
 平等原則が,形式的平等のみならず実質的平等をも保障すること,立法者を拘束すること,事実的・実質的差異を前提とする相対的平等であることは,これまで学習してきたとおりです(芦部126~130頁)。ただ,その具体的な審査方法については,予備校教育において,あまり目を向けられてこなかったように感じます。そこで,以下では具体的な審査方法をどのようにするのかを簡単にご紹介します。
 まず,平等原則の審査において,三段階審査は利用できません。自由権は,「自分限りで成り立つ権利であり,自分と自分の権利を制限する国家の2者があれば成立する」のですが,「法の下の平等は,自分と国家の2者だけでは成り立たない」からです。そのため,「審査は,基本的には別異取扱い→正当化という2段階に整理される」のです(作法106~107頁・欄外番号423)。
 ⅰ別異取扱いの段階では,「誰と誰を比較するのかを最初に明確にする必要がある」(高橋151頁)ことから,「比較可能な第三者を措定し,自分に対する取扱いがその者に対する取扱いよりも劣ることを主張」(作法106頁・欄外番号423)することになります。なお,「比較の対象は,1者の場合もあれば,複数の場合もある」(作法108頁・欄外番号425)点に注意しましょう(※8-2)。

※8-2 実務では,「比較の対象が誰であるかについて当事者間に対立が生じる場合」があります(作法108頁・欄外番号425)。しかし,比較の対象を争点とすることは,少なくとも司法試験との関係では,優先順位が低いと思います。なぜなら,国側が「原告と比較すべきは,B(原告より優遇されている者)ではなくC(原告と同じ処遇の者)である」と反論したとしても,依然としてAとBとの間には別異取扱いは存在するため,結局はAB間の別異取扱いにつき司法審査をすることになるからです。したがって,比較すべきはCであるとの反論は,AB間の別異取扱いが合理的かという審査の中で考慮すべき一事情にすぎないと考えられます。

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⑶ 目的手段審査を再構成する
 次いで,ⅱ正当化の段階ですが,学説上では目的手段審査をするのが一般的でしょう(高橋151頁,急所255頁など)。しかし,宍戸先生は,「平等における目的・手段審査は,区別の合理性を思考の中心に据えて,それに掃き寄せる形で目的の正当性や別異取扱いの程度を考慮するのがよいでしょう」(宍戸113頁)と指摘しています。その理由は,「平等については,人の区別と区別の目的とが密着しがちであること,そして別異取扱いが程度問題ではなくall-or-nothingの問題であるのが通常だという事情」(宍戸110頁)にあると指摘しています。

 こうして考えると,平等審査では,単に「人と人との区別の合理性」を問うべきことになりますが,目的手段審査は無用の長物となるわけではなく,次のように再構成することになります。

 まず,①目的審査としては,別異取扱いが発生している原因となっている理由を特定し,審査密度に応じてその理由の正当性を問うことになります。
例えば,非嫡出子法定相続分差別事件(最大判平7・7・5民集49-7-1789)では,「法律婚の尊重」と「非嫡出子の保護」ですね。前者については正当といえそうですが,後者については「非嫡出子には相続分はない」という判断が内包されているため,正当性に疑問があるといえそうです。

 次に,②手段適合性審査において,問題となっている差別の基礎が,当該目的を達成するために適切な手段・指標であるかを審査します。「差別の基礎」とは,「区別事由」と同義であり,別異取扱いの原因となっている事由をいいます。
 例えば,国籍法事件(最大判平20・6・4民集62-6-1367)では,「父母の婚姻の有無」ですね。同判決は,目的を「血統主義を基調としつつ,日本国民との法律上の親子関係の存在に加え我が国との密接な結び付きの指標となる一定の要件を設けて,これらを満たす場合に限り出生後における日本国籍の取得を認めること」とした上で,立法当初は「父母の婚姻」により我が国との密接な結びつきを測ることができたものの,婚姻関係の多様化した今日では適切な指標ではないとして,手段適合性を否定しました(※8-3)。

 以上の①と②が,区別の合理性を問うための審査となります。

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 最後に,③手段相当性審査として,別異取扱いの程度が過大でないかを審査することになります。尊属殺重罰規定事件(最大判昭48・4・4刑集27-3-265)の多数意見が,「刑法200条は,存続殺の法定刑を死刑または無期懲役のみに限っている点において,その立法目的達成のため必要な限度を遥かに超え」るとして,憲法14条1項に違反すると判断しているのは,この部分で違憲となったことを意味しています。ただし,前記のとおり,平等審査の中心は「区別の合理性」ですから,手段相当性審査は補助的なものであるといえます。ですから,非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法900条4号但書について,これを4分の3とする改正が成立したとしても,必ずしも合憲に傾くわけではありません(宍戸112頁参照)(※8-4)。

※8-3 手段適合性審査において,問題となっている差別の基礎が,当該目的を達成するために適切な手段・指標であるかを審査するのには,「なぜ差別するのか」ということと密接な関係があります。長谷部先生は,人が差別する理由として,情報費用の節約を挙げます(長谷部恭男「平等」星野英一=田中成明編『法哲学と実体法学の対話』(有斐閣・1989年)参照)。すなわち,「仕事の能力や,結婚後も働きつづける蓋然性について,肌の色や性別に基づいて判断しうると考える人にとっては,個別の情報を,丹念に調べるよりも,情報費用を節約して,肌の色や性別に基づく一般論のみから結論を下す方が,主観的には合理的だ」というわけです。しかし,このような主観的な合理性の「客観的な合理性は疑わしい」でしょう(長谷部163~164頁)。

※8-4 平等審査において,手段必要性審査の存在意義は疑問です。なぜなら,手段必要性審査は,「より制限的でない他の選びうる手段」の有無を審査するところ,横の関係を規律する平等審査において「制限的」という深さの問題を論じることができるのか疑問であるからです。差別の必要性は目的審査,他の指標との比較した目的達成度については手段適合性審査で検討されますから,手段必要性審査を措定する必要はないと考えることもできそうです。


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2 平等原則の違憲審査基準

⑴ 違憲審査基準のまとめ
 さて,平等原則の違憲審査については,区別の合理性という枠組みの中で,目的,手段適合性が中心的な審査となることがご理解いただけたと思います。
 平等の違憲審査基準は,厳格審査,中間審査(「厳格な合理性」の基準),合理性基準(合理的根拠の基準)の3つに分類するのが一般的ですね(芦部130~131頁)。
ここでは,自由権の違憲審査基準に倣い,下記のようにまとめてみました。

$憲法の流儀~司法試験・予備試験・国家公務員試験~-平等原則

⑵ 違憲審査基準の決定要素
 平等原則の違憲審査基準を決定する要素は,自由権とは少し異なります。自由権では,①憲法上の権利の保護の有無・程度,②制約の有無・程度・態様,③立法裁量の有無・程度の3要素でした。これに対し,平等では,①差別の基礎の性質(①-ⅰ脱却可能性,①-ⅱスティグマの有無),②差別により制約される利益の性質・程度,③立法裁量の有無・程度の3要素となります。

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 第1に,①「差別の基礎」とは,前掲のとおり,「区別事由」(読本101頁)と同義であり,別異取扱いの原因となっている事由をいいます。ここでは,①-ⅰ脱却可能性①-ⅱスティグマの有無の2つの視点が大切になります。おなじみの憲法14条1項後段列挙事由に該当するかという論点は,これらに位置づけることができるでしょう。

 まず,①-ⅰ脱却可能性とは,差別の基礎が,自らの意思や努力によって変えることのできるか否かを問題とするものです。すなわち,差別の基礎から脱却することが,自らの意思や努力により可能であれば,脱却すればいいだけの話ですから,厳格な審査基準を適用する必要はありません。
 例えば,前掲国籍法事件のように「父母の婚姻」という旧国籍法3条1項の要件を満たすのは,子にとっては自らの意思や努力によっては変えることができませんが,「司法修習生は,司法試験に合格した者の中から,最高裁判所がこれを命ずる。」という差別は,努力して司法試験に合格すれば脱却できますね。
 後段列挙事由は,―黒人から白人になったマイケル・ジャクソンや性転換手術により戸籍上の性別が変えることができるとしても―すべて①-ⅰ脱却可能性に乏しいといえそうです。

 次に,①-ⅱスティグマ(stigma)とは,「劣等の烙印」のことをいいます。スティグマがあると,情報費用の節約の原理(前掲※8-3参照)が発生するため,民主制の過程が機能不全に陥ることになります。そのため,民主主義の例外である違憲審査権が発動する要請が高まり,違憲審査基準を厳格化することにつながると考えることもできますね。
 後段列挙事由は,「人種,民族などの「疑わしい差別」(suspect classification),差別,嫡出であるか否かなどによる区別である「準・疑わしい差別」(quasi-suspect classification)」(読本101頁)という①-ⅱスティグマのある事由と概ね一致するということもできそうです。

 アファーマティブ・アクション(=ポジティブ・アクション,積極的差別是正措置)の違憲審査基準が緩和されるとの見解が有力である理由についても,このスティグマの理論の裏返しで考えることができます。すなわち,「少数者を優遇する立法は,多数派が民主的政治的過程を通じて是正することは容易であろうから,もっとも厳格な審査を行うべき理由があるか疑わしい」のです(長谷部169頁)。したがって,原則である民主主義に委ねることができるため,例外である違憲審査の出番ではない,ということです(違憲審査が民主主義の例外であることについては,第1回参照)。

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 第2に,②差別により制約される利益の性質・程度においては,当該差別によってどのような不利益が生じるかを具体的に論じます。いうまでもなく,不利益が大きければ違憲審査基準は厳格になり,小さければ緩やかになると考えられます。前掲国籍法事件における「日本国籍は,我が国の構成員としての資格であるとともに,我が国において基本的人権の保障,公的資格の付与,公的給付等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位でもある。」という説示が,この部分に該当するといえそうです。

 第3に,③立法裁量の有無・程度においては,立法府による専門的な判断が必要となるか否かを論じます。具体的には,租税,生存権,選挙制度(選挙権の行使の有無は除く)等は,立法裁量が働きます。

 なお,芦部説の,平等の違憲審査基準を決定する際に,後段列挙事由以外の事由による別異取扱いについては,「「二重の基準論」の考え方に基づき,対象となる権利の性質の違いを考慮」するべきであるとの指摘(芦部130頁)は,上記②と③に分解して考えることができますね。

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⑶ 違憲審査基準の相場観
 違憲審査基準の相場観としては,次のように考えています。ただし,あまりにもシステマチックに考えることは推奨しません。重要なのは,違憲審査基準よりも,個別的・具体的な論証です。この考え方は,あくまでも相場観を可視化するためのツールとして考えてくださいね。
まず,上記の①,②が認められれば各+1ポイント(①については,①-ⅰ又は①-ⅱのいずれかがあれば1ポイントとする。),③立法裁量がなければ1ポイントと配分します。
次に,検討の結果,3ポイントで厳格審査,2ポイントで中間審査,1ポイント以下は合理性基準と振り分けます。
前掲国籍法事件は,①+1,②+1,③0=合計2ポイントですから,中間審査であると理解することになります(※8-5)。

※8-5 国籍法事件の審査基準基準がいずれに該当するかは,議論が煮詰まっていません。青柳先生は,違憲審査基準を「厳格審査の基準」,「中間審査の基準」,「威力ある合理性のテスト」の3種類に分けた上で,同判決を一番緩やかな「威力ある合理性のテスト」(rationality test with teeth; rationality test with bite)であると評価しています(青柳幸一「審査基準と比例原則」戸松秀典・野坂泰司編『憲法訴訟の現状分析』(有斐閣・2012年)139頁)。「威力ある合理性のテスト」の特徴は,中間審査と異なり,「立法目的の審査では合憲性推定の原則が機能」するものの,「目的と手段の関連性の審査では,裁判所が事実に基づいて慎重に検討する」点にあるといいます(同140頁)。しかし,違憲審査権が民主主義の例外であるという機能論,裁判所の審査能力の限界から,単なる「合理性の基準」を排除する見解に賛成することはできません。そうすると,同判決は,無理に「威力ある合理性のテスト」を観念して,そこに分類するのではなく,単純に「中間審査」に分類する方がスッキリするように思います。青柳先生の見解には,合理性の基準でも個別的・具体的な検討を怠るべきではないとの裁判官や受験生へのメッセージが隠れているのかもしれませんね。


憲法訴訟の現状分析/有斐閣

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3 違憲の場合の救済方法

⑴ 平等審査による違憲判決は救済にならない
 これまで,平等原則の違憲審査の方法を学習しました。冒頭で述べた通り,平等原則は,「平等それ自体は何も求めていない,ただ比較を問題にする「空っぽ(empty)」な要請」
ですから,違憲となったとしても,救済方法をどうするかは自明ではありません。
 例えば,私が国家だったとして,懇親会において,女子学生に対しては私が奢り,男子学生に対しては実費負担を求める処分をしたとしましょう。これに不満である男子学生が提訴し,この処分が違憲となったとしても,裁判所の判断は「懇親会の費用負担で男女を別異取扱いすること」を違憲としてくれますが,「男子学生に対しても奢れ」という判決をすることは,原則としてできません。というのも,「懇親会の費用負担」の違憲状態を回復するためには,ⅰ男子学生にも奢る,ⅱ女子学生から懇親会実費を徴収する,ⅲ全員に懇親会費用の半額を支援する等の解決手段が複数存在します。裁判所が,これらのうちいずれが適切かを勝手に判断することは,立法府や行政府に対する介入となり,権力分立の観点から,原則として許されません。そのため,私がⅱという解決手段を選択すると,提訴した男子学生は,クラスのヒーローどころか「女の敵」に成り下がってしまう危険性すらあるのです。

⑵ 立法者意思に反しないならば救済可能
 もっとも,例外的に救済可能な場合があります。具体的には,「立法者がすでに第一次的判断権を行使し,立法者が本来有していた広範な裁量が著しく縮減された場合には,裁判所による直接的救済を例外的に認めることができる」と考えることができます(作法232頁・欄外番号737※太字は筆者,下線は原文ママ)。

法学セミナー 2013年 08月号 :司法試験問題の検討2013/日本評論社

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⑶ 国籍法事件判決を読む
 前掲国籍法違憲判決では,救済方法において,下記のような対立がありました。

ⅰ 多数意見=立法行為が違憲+過剰な要件を削除
 多数意見は,別異取扱いは合理性がないと判断した上で,憲法14条1項及び国籍法3条1項の父母両系刑血統主義という趣旨及び目的より,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得したという部分を除いた国籍法3条1項所定の要件を満たすならば,同項に基づいて日本国籍を取得することが認められると判断しました。
 その上で,このような解釈は「同項の規定の趣旨及び目的に沿うものであり,この解釈をもって,裁判所が法律にない新たな国籍取得の要件を創設するものであって国会の本来的な機能である立法作用を行うものとして許されないと評価することは,国籍取得の要件に関する他の立法上の合理的な選択肢の存在の可能性を考慮したとしても,当を得ないものというべきである」と述べています。

ⅱ 甲斐中辰夫・堀籠幸男裁判官共同反対意見=立法不作為が違憲+救済不可能
 これに対し,甲斐中辰夫・堀籠幸男裁判官共同反対意見は,「本件で問題となっている非準正子の届出による国籍取得については立法不存在の状態にあるから,これが違憲状態にあるとして,それを是正するためには,法の解釈・適用により行うことが可能でなければ,国会の立法措置により行うことが憲法の原則である(憲法10条,41条,99条)。また,立法上複数の合理的な選択肢がある場合,そのどれを選択するかは,国会の権限と責任において決められるべきであるが,本件においては,非準正子の届出による国籍取得の要件について,多数意見のような解釈により示された要件以外に「他の立法上の合理的な選択肢の存在の可能性」があるのであるから,その意味においても違憲状態の解消は国会にゆだねるべきであると考える。」として,多数意見の判断は「結局,法律にない新たな国籍取得の要件を創設するものであって,実質的に司法による立法に等しい」として,妥当ではないと主張します。

ⅲ 藤田宙靖裁判官意見=立法不作為が違憲+合憲補充解釈
 他方,藤田宙靖裁判官意見は,本件の問題点が立法不作為である点については,共同反対意見と同じですが,司法による立法に等しいというという批判について,多数意見とは別の観点から反論しています。
 すなわち,「立法府は,既に,国籍法3条1項を置くことによって,出生時において日本国籍を得られなかった者であっても,日本国民である父親による生後認知を受けておりかつ父母が婚姻した者については,届出による国籍取得を認めることとしている」ところ,「法解釈としては,この条文の存在(立法者の判断)を前提としこれを活かす方向で考えるべきことは,当然である」として,「考え得る立法府の合理的意思をも忖度しつつ,法解釈の方法として一般的にはその可能性を否定されていない現行法規の拡張解釈という手法によってこれに応えることは,むしろ司法の責務というべきであって,立法権を簒奪する越権行為であるというには当たらないものと考える」と判断しています。

ⅳ まとめ
 要するに,多数意見は,国籍法3条1項の「父母の婚姻」という要件は過剰な要件であるから,そのような立法は違憲であるとしているのです。これに対し,甲斐中・堀籠共同反対意見は,「父母の婚姻」を満たさない子について,国籍法3条1項のような国籍取得規定がないという「立法不作為」が違憲であると考えており,多数意見の解釈は無理があり,「実質的に司法による立法である」として批判しているわけです。これを受けて,藤田違憲は,前記共同反対意見に対し,司法による立法であっても,合理的な立法者意思に反しなければ問題ないと述べているわけです。
 前述の小山先生の見解も,藤田意見と同様の理解です。

憲法ガール/法律文化社

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まとめ
・平等それ自体は何も求めていない,ただ比較を問題にする「空っぽ(empty)」な要請である。
・平等原則の違憲審査は,区別の合理性がメイン。目的手段審査では,目的審査,手段適合性審査が中心となり,その他は付随的に考える。
・平等原則の違憲審査基準は,①差別の基礎の性質(①-ⅰ脱却可能性,①-ⅱスティグマの有無),②差別により制約される利益の性質・程度,③立法裁量の有無・程度の3要素で決定される。
・平等原則違反の場合の救済方法は,権力分立の観点から,原則として許されない。
・当該救済方法が立法者意思に反しないならば,例外的に許容される。


● 次回予告
 第9回は「財産権・請求権の基礎」です。お楽しみに。

【メモ】司法修習に役立つ書籍一覧

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※ご注意

この記事は,みなさんから寄せられた司法修習に役立つと感じた書籍を,便宜上一覧するために羅列したメモです。
下記の書籍についての感想は掲載しておりませんので,ご了承ください。
また,オススメ書籍があれば,コメントをいただければ幸いです。

1 民事裁判

⑴ 要件事実

完全講義 民事裁判実務の基礎〈上巻〉/民事法研究会

¥4,725
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要件事実論30講 第3版/弘文堂

¥3,990
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要件事実マニュアル 第1巻(第3版)総論・民法1/ぎょうせい

¥5,000
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要件事実マニュアル 第2巻(第3版) 民法2/ぎょうせい

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⑵ 事実認定

ステップアップ民事事実認定/有斐閣

¥2,415
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完全講義 民事裁判実務の基礎〈下巻〉/民事法研究会

¥3,675
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⑶ 手続

民事訴訟マニュアル上-書式のポイントと実務-/ぎょうせい

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民事訴訟マニュアル下-書式のポイントと実務-/ぎょうせい

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2 刑事裁判

⑴ 手続法

実例刑事訴訟法〈1〉/青林書院

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実例刑事訴訟法〈2〉公訴の提起・公判/青林書院

¥3,885
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実例刑事訴訟法〈3〉証拠・裁判・上訴/青林書院

¥4,410
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⑵ 事実認定
刑事事実認定入門/判例タイムズ社

¥2,625
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刑事事実認定重要判決50選 補訂版 上巻/立花書房

¥4,200
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刑事事実認定重要判決50選 補訂版 下巻/立花書房

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3 刑事弁護

事例に学ぶ刑事弁護入門―弁護方針完結の思考と実務/民事法研究会

¥2,000
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刑事弁護ビギナーズ/現代人文社

¥2,940
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和光だより 刑事弁護教官奮闘記/現代人文社

¥1,995
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4 検察

犯罪事実記載の実務 刑法犯/近代警察社

¥3,500
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5 その他
証人尋問ノート―30問30答/東京図書出版

¥1,260
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条解刑事訴訟法/弘文堂

¥18,900
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【お知らせ】憲法の流儀~平成25年司法試験憲法の巻~を期間限定配信

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10月13日(日)は,「憲法の流儀~平成25年司法試験憲法の巻~」にご参加いただき,ありがとうございました!

会場には200名弱のみなさまにお集まりいただき,教室が人で埋め尽くされており,みなさまの勉強に対する熱意を感じることができました。
中には,地方からわざわざお越しいただいた方までおり,私も思わず感激してしまいました。
また,お茶の差し入れをしていただいたりと,人の温かさに触れることもできました。

他方,USTのライブ配信でも,50名ほどのみなさまにご覧いただき,東京以外のニーズもあるのだなと,強く実感した次第でございます。

既存の予備校に依存することなく,ここまでの規模の講義ができるのは,やはりインターネットの強みですね。


なお,講義においては,下記の文献を参考にいたしました。
より深い議論を知りたい方,他の考え方を学びたい方は,是非ともご活用くださいね。
司法試験の問題と解説2013:別冊法学セミナー (別冊法学セミナー no. 222)/日本評論社

¥3,000
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司法誌験 論文解説&合格エッセンス〈平成25年〉―ここが聴きたい・ここを知りたい (本試験合格.../辰已法律研究所

¥2,205
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さて,アンケートにすべて目を通したのですが,
・財産権と請求権の検討方法
・選挙権の検討方法
などが,やはり要望として強かったようです。

また,当日出席できなかった方のために,映像を公開して欲しいとの声が多く寄せられました。

そこで,下記のURLで【2013年10月31日までの期間限定配信】をいたします!
ただし,USTですので,画質が荒く,板書が読み取れない箇所もあると思いますが,その点はご了承ください。

公開は終了しました。
たくさんのご視聴,ありがとうございました!



■アンケート
こちらのフォームにご入力ください


そういえば,司法試験考査委員(憲法・主査)である青柳幸一先生が,待望の基本書を出版しましたね。

わかりやすい憲法(人権)―警備業実務必携/立花書房

¥2,625
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この薄さの基本書には珍しく,非常に豊富かつ秀逸な判例の抜粋があります。
判決文のエッセンスが非常にわかりやすく記載されており,ときおり鋭いコメントが記載されております。
青柳幸一先生は,非常に判決文の言葉を丹念に読み込まれているなと感じる書籍でした。

司法試験にはもちろん使えますから,非常におすすめです!

【告知】2月28日(金)・3月1日(土)13時~17時 憲法答案の流儀@青山学院

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ご無沙汰しております。
伊藤たけるです。

平成26年2月28日(金)~3月1日(土)に
青山学院青山キャンパスにおいて
「憲法答案の流儀」を開催いします!

この企画は,青山学院の法律サークルである
尚法会の企画によるものですが,特別に外部の学生にも参加できるようにいたしました!

現在残りの枠は【31名】,〆切は【2月20日(木)】までとなっております。
先着順ですので,奮ってご参加くださいね。
なお,講演費用として,2000円が必要ですので,その旨ご了承ください。

お申込はこちらから!

【対象】
 大学2~4年生,LS未修者
【内容】
・1日目
 ①法令違憲・適用違憲の違いとは?
 ②自由権の検討方法とは?
・2日目
 ③平等原則,請求権の検討方法とは?
 ④個別的・具体的な論じ方とは?
※上智大学で開催した講義と同内容ですのでご注意ください。
【費用】
 2000円
【日時】
・1日目
 2014年2月28日(金)
 13時~17時(予定)
・2日目
 2014年3月1日(土)
【場所】
 青山学院大学(青山キャンパス)
 17号館 3階 17310教室
http://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/aoyama.html#anchor_19

【募集中】リベンジ組限定!直前期フレームワークゼミ

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ご無沙汰しております。

この度,私こと伊藤たけるは,同期である井垣孝之と「ロースクール・ポラリス」を立ち上げました。!



ホームページはこちら

多様な人材を法曹にするという司法制度改革の理念のもと、2004年に法科大学院制度がスタートしました。
現在、法科大学院は、その理念を体現できているでしょうか。
そして、法曹を目指す人たちは、法曹になるために必要な勉強に迷いなく打ち込めているのでしょうか。

周知のとおり、法曹界の未来は、合格すれば安泰というわけではありません。
法曹人口が増加し、弁護士業界では競争原理が働くようになりました。
そのためか、司法試験の志願者のみならず、法学部の志願者までもが減少しています。

しかし、私たちは、法曹資格が社会に必要とされる魅力的なものであることを信じています。
混迷を極める法曹界において「生き延びる」ためには、道しるべや羅針盤となるような教育が必要です。
ロースクール・ポラリスは、そんな新時代の教育を切り拓くために生まれました。

ポラリスとは、北極星のことです。
夜空でひとつだけ動かない北極星は、昔から迷える旅人の道しるべとなってきました。
私たちは,「ロースクール・ポラリス」という名前に、法曹界で生き延びるための道しるべなりたいという想いを託しました。



ロースクール・ポラリスでは,リベンジ組の方限定で,「直前期フレームワークゼミ」を開催いたします!

3月になると,5月に司法試験を控えた受験生は不安になります。
自分は試験に間に合うか?
自分の勉強の仕方は正しいのか?
自分の答案は評価されるのか?
一度司法試験に落ちて再挑戦する「リベンジ組」には,特に不安が募ります。
周りに友人もおらず,修了したロースクールのサポートもほとんどない。
そんな状況でも,1人で勉強を続けなければなりません。
そんなリベンジ組の方たちのためだけに,私たちロースクールポラリスは,どんなロースクールでもどんな予備校でもできなかった過去問ゼミを開催いたします。

フレームワークゼミの特徴は,次の3つです。
ポイント1:合格者のフレームワークを伝授
ポイント2:目指すべき参考答案を示す
ポイント3:答案ができるまでの思考過程を示す

詳細はこちら

ご興味のある方は,ロースクール・ポラリスのホームページをチェックしてみてください。
今後も,様々な講義を企画中です!

今後とも,ロースクール・ポラリスをよろしくお願い申し上げます。



司法試験の問題と解説2013:別冊法学セミナー (別冊法学セミナー no. 222)/日本評論社

¥3,000
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平成25年司法試験論文合格答案再現集―上位者10人全科目・全答案/辰已法律研究所

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司法試験 憲法合格答案の書き方/法学書院

¥1,890
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三菱レイヨン・クリンスイ ポット型浄水器 大容量タイプ CP207-WT/三菱レイヨン・クリンスイ

¥価格不明
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憲法〈2〉基本権 (法学叢書)/成文堂

¥3,885
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憲法1 統治 (LEGAL QUEST)/有斐閣

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憲法2 人権 (LEGAL QUEST)/有斐閣

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【告知】憲法答案の流儀~個別的・具体的検討のために~@同志社LS寒梅館203教室

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ご無沙汰しております。

法科大学院に入学したての方々は,授業にも慣れてきた頃ではないでしょうか。

他方,いよいよ司法試験直前期ですから,修了生の殺気立つ雰囲気を感じているかもしれません。

さて,1年後あるいは,2~3年後,みなさんにも司法試験がやってきます。

ロースクールに入学したけど、憲法の勉強方法がよくわからない!
なんとな~く書いたら合格してた!
そう感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

試験対策とロースクールの講義は別だという声を耳にすることがあります。
実際に,ロースクールの講義は判例ばかりで退屈している方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、果たして本当に別物でしょうか?
みなさんは、本当は有益な講義の時間を無駄にしていませんか?
それはおそらく、司法試験を見据えた勉強方法がわからないからです。
本当はロースクールの講義は役に立つものもあるのです。

長いようで短い法科大学院生活ですが,より有益に授業を「活用」することができれば,時間を無駄にすることはありませんね。

そこで,司法試験で求められている答案のイメージをつかむことで,今後の学習のイメージを持つことができればと思い,同志社LSのご厚意で講義を開催することになりました。

具体的には,
①試験委員の求める個別的・具体的検討とは?
②どのようにして個別的・具体的に答案で論じるべきか?
③個別的・具体的検討のためにはどんな勉強が必要か?
という点を中心に講義をしてまいります。

(日時)
第1回5月10日(土)18時25分~19時55分
第2回5月24日(土)18時25分~19時55分
第3回5月31日(土)18時25分~19時55分

(場所)
同志社大学寒梅館203号教室
(室町キャンパス)
http://www.doshisha.ac.jp/information/campus/access/muromachi.html

(対象者)
同志社在学生・修了生
※参加自由,予約不要,受付フリーです!

(持ち物)
判例百選Ⅰ・Ⅱ(なくてもOK!)

(使用教材)
・オリジナルテキスト
(※図書室前の棚に置いてあります。会場でも配布します。)

というわけで,ふるってご参加ください!


【速報】平成26年司法試験 論文式試験問題 公法系第1問※解説ではありません!

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1 司法試験初日お疲れ様でした

受験生のみなさま,まずは1日目の司法試験,本当にお疲れ様でした!
本日は,朝8時より,大阪商工会議所とまいどーむ大阪の前に立ち,受験生の皆さまの応援をしていました。
見慣れないスーツ姿の私に驚く方もいらっしゃいましたが,やはり会話をすると表情が和らぎますね。

合格を決めるのはあなたではありません。
試験委員が勝手に決めることです。

失敗したことをくよくよせず,すぐに忘れて次の科目に取り掛かりましょう。
実際に,友達と話して何を書いたかなんて話題になるとは思いますが,ぐっとこらえて,静かに自宅に帰りましょう。

毎年話しているかもしれませんが,私は2日目の民事系でやらかしてしまいました

しかし,そんな落ち込んだ私を見て,見ず知らずのある男性が,次のように声をかけてきたのです。

「この試験は,諦めたらいけません。まだまだ挽回できますから,頑張りましょう。」

そこで,気を取り直して,3日目の試験がない日は,刑事系の総仕上げと択一対策を必死にやりました。

終わったことはどうにもなりません。
失敗しても何とかなります。
失敗したのがわかったのであれば,他の科目でそれをカバーすればいいのです。

完璧に今日を迎えている人などいません。
失敗をしてない人なんているわけがないのです。

ですから,最後まであきらめず,やり抜いてくださいね!

2 速報:平成26年司法試験論文式試験問題(公法系第1問)を公開

最早毎年恒例になりつつある,どの予備校よりも,法務省よりも早い,司法試験の問題の公開をいたします!

受験生の精神的な負担を考慮して,司法試験最終日まで,一切の解説はいたしませんので,ご安心を。


問題文はこちら

※1:実際の問題文と1行あたりの文字数が異なるところ,誤植がある可能性もありますので,ご了承ください。

それでは2日目以降も頑張ってくださいね!

司法試験合格答案の基本―落ちない答案の書き方/法学書院

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【速報】平成26年司法試験と予備試験問題が公開されました

【参加者募集】フレームワークで解く平成26年司法試験(憲法・刑訴法)

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司法試験の過去問を解かないといけないけれど,とっかかりがつかめない・・・
どうやって勉強したら司法試験の問題が解けるようになるのかわからない・・・
一応過去問の答案を書いてはいるが,伸び悩んでいる・・・

そんなあなたに朗報です。

実務家であれば当然身につけている思考枠組みを形にした「フレームワーク」を使い,平成26年の過去問にどのようにアプローチし,答案を構成するのかを示します。
本講座を受講したあなたは,司法試験を解くためにはどのような思考をすればいいかがわかるようになるはずです。
基本書や判例の「読み方」も変わります。

「フレームワーク」がある状態で勉強するのとそうでないとでは,勉強時間が同じでも,まったく効率が変わることを実感することでしょう。
最新の司法試験の問題を使って,ぜひこの機会に「フレームワーク」を武器にしてください!

今回は参考答案も配布します!
ご期待ください!

なお,開催科目は,ポラリスが特に強みとしている憲法(伊藤たける)と刑訴法(井垣孝之)です。

お申込はこちらから

司法試験予備試験 完全攻略本/東京リーガルマインド

¥1,620
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なお、平成26年6月22日@信濃町にて開催する講義と一部内容は重なります。
今回の6月29日@京都の講義は,そのダイジェスト版です。
したがって,既に6月22日の講義にお申込していらっしゃる方は刑訴法をご覧ください。
(ただし,分割販売はいたしておりませんのでご了承ください。)

(参考)おかげさまで満員御礼です!
【伊藤たける先生との共同企画】「憲法論文の流儀~フレームワークで解く平成26年司法試験~」未完の憲法/潮出版社

¥1,512
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【予告】東京都内・京都市内でゼミ開催?

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1 満員御礼!

内藤慎太郎先生(Lizard塾主催者・弁護士※ブログはこちら)にお招きいただいたイベントも無事終了いたしました!

6月22日(日)@信濃町で「フレームワークで解く平成26年司法試験」は,おかげさまで満員御礼でした!

会場は満員!

2 「憲法論文の流儀」夏発売予定!

今回の講義は,内藤先生からのご招待ということもあり,レジュメを1から作り直しました!
これは,夏に発売予定の「憲法 論文の流儀」の講座で使用するテキストのエッセンス版です。
もちろん,夏に発売予定の講義では,さらに充実させて憲法上の権利の各論のフレームワークにも迫ります!

なお,憲法の流儀は,伊藤塾で開催していた講義を全面的にリニューアルしています!
特に,法的三段論法をテーマに論述方法を確立し,誰でも再現可能な形に書き下ろしました。
テキストのみならず,答案例も全面改訂し,近年の司法試験の傾向を意識したつくりになっております。


行政法ガール/法律文化社

¥2,592
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3 6月29日(日)18時20分~司法試験解説会(憲法・刑訴法)受付中!

6月29日(日)18時20分~@キャンパスプラザ京都で,平成26年司法試験の憲法・刑訴法の解説会も開催します!
応募締切までまだありますので,奮ってご参加くださいね。

憲法だけではなく刑訴も実施します!
刑訴では,捜査法のフレームワークだけではなく,新たに訴因変更のフレームワークを追加しています!
2つの科目とも講師書下ろし参考答案をもれなくプレゼント!
また,会場受講でもネット受講でも,講義は6か月間見放題ですので,いつでもどこでも復習できます!

インターネット受講も可能ですので,京都にお越しになれない方からのご参加もお待ちしております!
とはいえ,会場では私たちがみなさんのお悩みに直接お答えしますので,参加可能な方々は会場受講をオススメいたします!





4 ゼミ開催?

さて,ここからが本題です。

夏休み,伊藤たけるが直接指導する「とあるゼミ」の開催を企画しています。

しかも,ゼミは1つではなく,2つ以上のレベル分けに応じて募集する予定です。

さらに,首都圏の方には朗報です。
私ではなく,東京都内でのゼミを企画している団体の方が,私を呼んでいただける可能性があります。

というわけで,今後もブログをチェックしてくださいね!

工藤北斗の合格論証集 民法/法学書院

¥1,728
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【演習】憲法事例問題を解く 第1回 旧司法試験のすゝめ

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1 事例問題は何がいいですか?

「たけるさん,事例問題を解けとおっしゃいますが,憲法はどの問題集がおすすめですか?」

そんな質問を受けることがよくありますね。
今回は,そんな質問にお答えする記事を書きたいと思います。

2 6月29日(日)18時20分~司法試験解説会(憲法・刑訴法)のお申込を6月26日まで延長!

その前に,1つだけ宣伝させてください。

6月29日(日)18時20分~@キャンパスプラザ京都で,平成26年司法試験の憲法・刑訴法の解説会も開催いたします。

現在多数のお申し込みをいただいていることから,お申込期限を延長いたしました!

【6月26日23時まで】にお申込くださいね!

憲法だけではなく刑訴法も実施します!
刑訴法では,捜査法のフレームワークだけではなく,新たに訴因変更のフレームワークを追加しています!
2つの科目とも講師書下ろし参考答案をもれなくプレゼント!
また,会場受講でもネット受講でも,講義は6か月間見放題ですので,いつでもどこでも復習できます!

インターネット受講も可能ですので,京都にお越しになれない方からのご参加もお待ちしております!
とはいえ,会場では私たちがみなさんのお悩みに直接お答えしますので,参加可能な方々は会場受講をオススメいたします!




3 司法試験受験生は過去問を

さて,いよいよ本題です。

司法試験を受験する方は,まずは過去問をつぶしてください。
その際,参考にするべきは予備校の答案例ではありません。
憲法ガールのような定評のある答案例を参考にしましょう


憲法ガール/法律文化社

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あわせて新刊の行政法ガールもチェック!
行政法ガール/法律文化社

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それでも足りない!
もっと欲しいの!
という方には,司法試験を2回以上解くまでは,我慢してもらいたいところです。
そこまでたどり着いた方には,次の2冊がおすすめですね。

事例研究 憲法 第2版/日本評論社

¥4,104
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憲法の急所―権利論を組み立てる/羽鳥書店

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4 予備試験対策はどうすれば?

ところが,これらはいずれも司法試験向けの教材であり,学部生や未修者にはハードルが高いものです。

そこで,予備試験受験生にオススメなのが,旧司法試験の問題です!

旧司法試験の問題は非常によくできている上,入手も容易です。
(旧司法試験の問題及び出題趣旨はこちら※法務省ウェブサイト)

この問題に手を加えて,事例問題にした上で,主張反論形式にするだけでOKです。

例えば,次のようにすることが考えられます。

〔第1問〕(配点:50)
20**年2月10日,A県B市の繁華街の交差点において,自動車の多重衝突により多数の死傷者が出た交通事故(以下「本件交通事故」という。)が発生した。
本件交通事故の発生前後の状況を,たまたまその付近でドラマを収録していたテレビ局X社のカメラマンがデジタルビデオカメラで撮影しており,X社がこれを編集の上ニュース番組で放映した後,撮影時の生データが記録されたディスクを保管していたところ,同事故を自動車運転過失致死傷事件として捜査中の司法警察員が,令状に基づき同ディスクそのものを差し押さえた。そのため,X社は,差押処分の取消しを求めて準抗告を申し立てた。
その後,本件交通事故を取材していたテレビ局Y社は,一般人が撮影したデジタルデータの記録されたディスクのコピーディスクを入手し,それを編集の上ニュース番組で放映したところ,同事故に関する自動車運転過失致死傷被告事件の係属するA地方裁判所が,Y社に対し,同コピーディスクの提出命令を発した。そのため,Y社は,提出命令の取消しを求めて抗告を申し立てた。

〔設問1〕
あなたがX社の訴訟代理人となった場合,あなたは,どのような憲法上の主張を行うかを述べなさい。
そして,国側の処分を正当化する反論についてポイントのみを簡潔に述べた上で,あなた自身の見解を述べなさい。

〔設問2〕
あなたがX社の訴訟代理人となった場合,あなたは,どのような憲法上の主張を行うかを述べなさい。
そして,国側の処分を正当化する反論についてポイントのみを簡潔に述べた上で,あなた自身の見解を述べなさい。


(PDFファイルはこちら

5 何を参考に解けばいいか?

さて,旧司法試験を解けばいいとしても,さすがにフリーハンドで採点をすることはできません。
旧司法試験をやみくもに解くだけでは効率が悪いでしょう。
そのため,解説を参考にする必要があります。

旧司法試験の解説としては,次のようなものがあります。

司法試験論文過去問講座〈1〉憲法・刑法/法学書院

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しかし,正直なところ,あてはめが「The旧司法試験」という感じであり,近年要求されている個別的・具体的な検討がなされた答案としては,やや不十分な感は否めません。

それではどうすればよいのか。

そうですね,これは言い出しっぺの責任です。

私が解説をしましょう。

というわけで,予備試験対策をする方向けに「とある企画」が進行しています。

続報をお楽しみに!
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